高齢化社会が進むなか、いまや介護は個人にとっても社会にとっても大きな問題となっています。親や配偶者の介護のために長年勤めた会社を辞めたり、実家の近くに引っ越したり、という話はよく聞きますが、それによって職を失って自らの生活に困ってしまう人や、介護うつに陥るケースもあるといいます。介護される人もする人も、両方がそれぞれの人生を幸せに生きる介護を実現するにはどうすればいいのでしょうか。
社団法人介護離職防止対策促進機構の理事でもあり、ウェルリンク株式会社で「介護とこころの相談室」のチーフカウンセラーを務める飯野三紀子さんは、著書『仕事を辞めなくても大丈夫! 介護と仕事をじょうずに両立させる本』のなかで、「介護にはマネジメント力が重要」だと書いています。
介護が目の前に迫ったのなら、まず介護者である自分を取り巻く環境のマネジメントが必要になります。
マネジメントする領域は、「家族・親族」、「会社・職場」。「行政・地域」、「医療・介護」の四つです。これを図式化して、項目ごとに、「出来ていること」「やること」を書き出していくと、環境のマネジメントが可能になります
介護すべき家族を目の前にすると、誰でも最初はパニックになります。けれどそこで「自分がやらなくては」と思い込んで一人で抱え込んではダメ。まずは冷静に状況を整理し、現状を客観的に理解して、自分に合った介護プランを立てることがポイントだといいます。そして、決して自分だけで背負わないこと。社会には介護を支えるいろいろな組織やサポートする人があり、仕事についても、現在では介護休暇や介護休業という制度があります。そうしたものを上手に利用しながら介護というミッションを「マネジメント」することが、自分自身の生活と介護を両立させるカギになるのです。
もう一つ、忘れてはならないのが「心のマネジメント」。介護は心身ともに負担の大きな仕事です。特に心のケアは、放っておくと共倒れになる危険性もはらんでいます。「介護する」ことも大切ですが、まずは「自分ファースト」を心がけて。介護のストレスを強く感じたり、体調に異常が出てきたら、介護プランを見なおし、周囲の理解と協力をあおいで無理のない介護生活を送ることが大切です。
自分の仕事や生活を守りながら介護を全うし、笑顔で家族を看取った人たちは口々に、「介護の経験がその後の仕事に大きく役に立った」と言うのだそうです。両立介護の成功は、もしかすると人生のキャリア・アップにつながるのかもしれません。