気のせいじゃない?健康でしっかり者の父が認知症という事実が受け入れられない

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:一人っ子
性別:女
年齢:53
プロフィール:実家から離れて30年余り、今はシングルマザーで高校生の子供を育てています。

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近所の個人病院で70代前半の母がガンと診断されたとき、車で2時間もかかる大きな病院まで、70代後半の父が母を軽トラに乗せて毎週通院していました。そして母の短期入院時にも、父は毎日欠かさず母のお見舞いに軽トラで通っていました。

母や、両親の近所に住む親戚が「父に少し認知症のような言動が見られる」と言っていましたが、私と話す父の口調はしっかりハッキリしているし、質問に対する回答も明快なので、私は父が認知症という意見を真剣に受け取ってはいませんでした。物忘れは私にもあるし、70代後半なら物忘れがあってもそれが普通! 認知症とは大げさ過ぎる! と思っていました。

母の長期入院が始まり、父が家に一人で暮らすようになったときでも、私は父の「几帳面さ、料理の腕前、きれい好きなところ、真面目さ、手先の器用さ」は知っていたので、特に問題ないと思っていました。

しかし、一人暮らしの父の様子を見てくれていた親戚から「おじさんがご飯を食べていない」「真っ暗な部屋に居た」などなど、「ん?」と思うような報告を受けることが多くなってきました。そんなある日、実家に戻り、母に頼まれた病院代の支払いをしようとしたところ、父の年金口座には1円もお金がなかったのです。

父にお金がないことを言うと驚いて「お金がないはずはない! 俺は使ってない!」と言い、入院中の母は「年金口座はキャッシュカードを持つ父しか使えない」と困惑し、「泥棒か、父が誰かに騙されたのか」いう始末。

通帳記入をして調べたところ、盗られた形跡も何もありませんでした。

結局、全て父が日々使っていたのです。そして、それを忘れていたのです。

それでも私は「もの忘れは私にもある。年寄りなら尚更あるだろう」と思っていました。

一人暮らしが長期になると父には徐々に「真面目、几帳面、きれい好き、料理上手、器用」な様子が見られなくなり、口だけが達者なまま。そして、家にいるときはテレビの前に座っているだけで、母のお見舞いにも行かなくなりました。さらに物忘れも激しくなり、言う事も毎回違い、話も支離滅裂になってきたのです。

それでも私は「母がいないから混乱しているだけかも」と思っていました。

ただ、父の一人暮らしを心配する周囲のために、父に平日は日帰りのグループホームに行ってもらうことにしました。グループホームのことを言うと「年寄りばっかりで嫌だ!」「こんな所にいたら人に"ボケた"と笑われる」と嫌がっていましたが、私は「普通だからからこそ嫌がるんだよね」と、まだ父が認知症ではないと思っていました。

グループホームに行く初日の朝、嫌がる父を職員さんが上手におだてて連れ出してくれ、さすがプロ!と安心していました。

ですが、少し経つとホームから「『自宅に帰る!』と暴れてホームの玄関ドアを壊そうとした」「怒って利用者さんや職員さんに手を上げようとした」と電話がきて、「職員の数も限られた中、つきっきりで見ていられない。ほかの利用者さんに危害が及ぶ前に、おうちに戻して良いですか」と言われてしまいました。日ごろの父からは想像もできない恐ろしい姿を聞き、やっと私は「父が認知症なのかも」と理解したのです。

役所に勤め、凛として、真面目で何でも出来た父。足腰も丈夫でウィンドーショッピングが大好きだった父。そんな父が認知症になったことを受け入れるまでにかなり時間がかかりました。いまだに「80歳を超えたらこれくらい物忘れがあっても普通なのかも」と思ったりしてしまうときがあり、身内びいきも甚だしいな、と自分が嫌になります。

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