年金額は今後減る一方? 最近の年金制度の変更点をおさらいしよう

親世代、子ども世代のどちらにも関わりが深い年金制度。少子高齢化が進行していく中で、私たちに支給される年金額は減っていくのか、子ども世代が将来、年金をもらうころには年金制度はどうなっているのか、気になる人も多いでしょう。年金制度の現在とこれからについて大和総研研究員の佐川あぐりさんに聞きました。

◇◇◇

 
少子高齢化により年金額が減額に

「公的年金は賦課(ふか)方式といって、現役世代が払う保険料を高齢者に年金として給付する形をとっています。しかし、少子高齢化で現役世代の人口は減少傾向に。賦課方式を維持するためには、年金額を減らす必要があります」と大和総研の佐川研究員は話します。 

 

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現在、年金制度は3階建てになっています。「最近は、第3号被保険者なども3階部分を強化できるようになりました。それでも、子ども世代が年金を受給するころには、実質的な受給額がいまよりも少なくなることが予想されます。対応策を家族で話し合っておくことが大切です」と佐川さん。 

 
年金の将来を見据えた、働き方の検討も必要

将来の年金額を増やすには、厚生年金に加入できるような働き方をするのも一つの方法です。厚生年金に加入できる条件の緩和が進み、フリーターやパート勤務など、非正規雇用の人も加入できるケースが増えてきました。

「厚生年金に加入すると、将来、国民年金に上乗せして厚生年金も受け取れます。厚生年金の保険料負担は会社と折半になるので、少ない負担で年金の上乗せが可能です。お子さんが就職や転職を考えているのなら、厚生年金に入れる会社や働き方を探すといいかもしれません」(佐川さん)

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年金額に影響を及ぼす最近の年金制度の変更点


●厚生年金が適用される人の条件は拡大している

2016年9月30日まで
→所定労働時間が週30時間以上の人
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2016年10月1日から
→従業員が501人以上の企業で1~4を満たしている人
1. 所定労働時間が週20時間以上
2. 月額賃金8万8,000円以上の見込み
3. 勤務期間が1年以上の見込み
4. 学生ではない
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2017年4月1日から
→従業員が500人以下の企業で労使の合意があり、上記の1~4を満たす人

 

 

急速な少子高齢化に対応するため、国は2004年の年金制度改革で、現役世代の保険料を含む「財源」と、高齢者への年金「給付」の両方について見直しを行いました。現役世代の保険料は、厚生年金は給与と賞与の18.3パーセントに、国民年金は1万6,900円(賃金の変動に応じて毎年改定)に固定されました。それに国庫負担、積立金を加えて財源とする仕組みが完成したのです。そして、下図のように財源の範囲内で年金額を調整して給付することになっています。

 

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年金の財源が固定されたので、高齢化の進展に応じて年金額を下げる必要があります。そのために導入されたのが「マクロ経済スライド」です。現役世代の人口減少を考慮して、年金額を自動的に調整する仕組みです。「年金額が減ると生活に影響します。しかし将来、子ども世代がもらう年金額を、政府が掲げる『現役世代の収入の50パーセント』に安定させるためには、調整を先延ばしにはできないのです」(佐川さん)

 

マクロ経済スライドとは?

年金の改定率を賃金や物価の上げ幅よりも低く抑えることで、年金財政の悪化を避け、将来も一定の給付水準を確保する仕組み。賃金や物価の伸びが小さかった場合などは、特例措置により見送られた。実施されたのは2015年度のみ。

マクロ経済スライドを発動した2015年度の例

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2015年度の賃金上昇率は2.3%で、2015年度の「スライド調整率0.9%」とこれまでの特例措置による払い過ぎの「段階的解消分0.5%」を引いた0.9%が「年金の改定率」となる。

マクロ経済スライドを確実に行えば、2014年度に「現役世代の収入の60%」だった年金水準は、子ども世代が受給する2040年~2050年ごろには、50%で安定すると予想される。

 

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取材・文/松澤ゆかり イラスト/オオノマサフミ

 

佐川あぐり(さがわ・あぐり)さん

大和総研研究員。2006年入社。政策調査部勤務。年金制度が専門。日本証券アナリスト協会検定会員。

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この記事は『毎日が発見』2018年10月号に掲載の情報です。

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