大人世代になると「終活」という言葉を耳にするようになります。でも、なんだか大変そうだし、何から始めればいいのか悩んでいる方も多いはず。「頑張り過ぎない自分流の終活」を探すことで、これからの人生をもっと楽しめるようになりますよ。今回は、87歳現役の美容研究家・小林照子さんに、「終活」についてお話を聞きました。
【前回】「『難しい』と思うことが生きる力」87歳現役ITエヴァンジェリスト・若宮正子さん「頑張らない終活」
小林照子さん・87 歳
"命"という時間を有意義に使う。私の「終活」は、"生ききる"こと―
人をつなぐ。後継につなぐ。こんな終活があってもいい
メイク業界で活躍し、56歳で自身の会社を起こし、87歳になってなお、後継の育成を欠かさない小林照子さん。
小林さんにとっての「終活」をお聞きしました。
「私の『終活』には2本の柱があります。一つは、年をとったからと自分自身の活動を止めるのではなく、つなげていくこと。学校や会社を通して『教える人』を発掘し、私の理念を継ぐ人を探して続けてもらえば、50年100年先の未来に、私がこれまで行ったことがつながっていきます。もう一つがボランティア。私が考えてきた美容の哲学を活用して生きる新しいリーダーを育成するために『アマテラス・アカデミア』という一般社団法人を作り、1年に15人ずつリーダー育成を行っています。目標は150人。孫世代の方々が生きやすい未来を創ることを、夢見ています。それとともに、人とのつながりを作り上げていく。忙しいときは人間関係が希薄になりがちですが、いまだからこそ人との絆を編むことができます。残念ながら人間は、永遠に生きられるわけではありません。であれば、最後の最後まで、がむしゃらになって『生ききる』べきだと、私はそう思っています」
「アマテラス・アカデミア」も4期を迎え、ますます活況に。人との絆を編み続けています。
いわゆる「終活」ではなく「自分の時間」を大切にすることも、小林さん流の「終活」だといいます。
「私はこれまで一途に仕事をしてきました。なので、そろそろ私自身の時間を持ってもいいのかな? と思い、70代に入ってから田島享央己さんに師事し彫刻を始めました。12年ほどたち、いまは人間を彫り始めています。また、86歳からピアノのレッスンも開始。テレビで見た『駅ピアノ』のように、サラッと弾いて去る、あんな姿をお見せできたらいいですね。
言葉に出すと実現せざるを得ないので『やる』と思ったことは有言実行にするようにしています」
女性の半身は現在手がけている彫刻。愛犬を彫った作品も。
ハシビロコウは小林さんの好きなモチーフ。「エサを食べる瞬間だけ、とても敏捷に動く。こんなに不思議な鳥、他にいませんよね」
小林さんのご家族は、娘さんとそのお子さん一家。
ご家族に対して行っていることはあるのでしょうか。
「娘や孫に形として残せるものは多くありません。ただし、人間にとって最も大切なのは、物を残すことではなく、人とつながり、縁をつないでいくこと。そして、夢を持つ誰かを応援していくこと。『小林照子奨学基金』を作ったのも、その考えからです。私が大切にしてきた考えを、家族や後継が未来につなげてくれたらうれしいですね」
小林さん流・頑張らない終活
1.残すのは物より心
2.人との縁を大切にする
3.がむしゃらに趣味を追求
「駅ピアノ」での演奏を夢見て、毎日のピアノの練習を欠かさない。楽譜の文字が小さいため、見てすぐ分かるよう楽譜に音階などを書き込んでいる。
取材・文/和栗 恵 撮影/木下大造 ヘアメイク/河面美咲(フロムハンド)