「なんか自分が損してる気がする...」そんな気持ちになったこと、ありませんか?それは、あなたが相手に「NO」を言えていないからかもしれません。「大切なのは、自分と他人の間の境界線を知って守ること」という鈴木裕介さんの著書『NOを言える人になる』(アスコム)から、すぐに実践できる対処法をご紹介します。
人生は何事も経験だ。
勉強だってスポーツだって仕事だって、最初は誰でも初心者だけど、経験を重ねていくうちに(向き不向きはあっても)少しずつ慣れていく。
NOを言うことも、何度かチャレンジしてみれば「なんだ、意外と平気じゃん」「NOを言ったからといって、人や社会とのつながりが完全に断たれるわけじゃない」と、きっと思えるはずだし、いずれ「NOを言うことで離れていく人や仕事なんて、そもそも自分には必要がない」とさえ思えるようになるかもしれない。
でも、そのためには、「NOを言い、それを受け入れてもらえる」という「最初の一歩」が必要であり、最初の一歩を踏み出すためには、信頼できる人との出会いが必要だったりする。
一生懸命勇気をふりしぼってNOを言っても、自分にとって不本意な結末に終わってしまったら、その人はおそらく、それまで以上に、NOを言うことが怖くなってしまうだろう。
できれば最初のうちは、「この人ならNOを言っても、おそらくわかってくれる」と思える人を相手に、経験を重ねたいところだ。
本来ならば、子どもの自己肯定感を育み、NOを言う経験を積ませるのは、親や家族が担うべき役割なのかもしれない。
実際、親子関係が良好で、子どもの頃に「NOを言っても許してもらえる」という経験をしている人は、NOを言うことへの抵抗感が少ない傾向がある。
「NOを言っても、相手(親)との信頼関係は揺るがない」「NOを言っても、親は自分を愛してくれる」という自信や安心、自己肯定感が得られるからだ。
ところが、子どもの頃にNOを言うことが許されない環境で育つと、NOを言うことを許してもらえていた人の何倍も、NOを言うことが怖くなる。
NOを言う経験を積み重ねることができず、「他人との絶対的な信頼関係」が存在することを信じることもできず、世界に対し恐怖心や不安感を抱いてしまうからだ。
そういう人が、NOを言える人になるためには、「本当に信頼できる一人めの大人」に出会い、良い関係をつくり、「自分はNOを言ってもよい人間である」「NOを言っても壊れない人間関係がある」ことを知り、そこを入口にして、世界とのつながりを実感するしかない。
トランプの「大富豪」なんかと同じで、残念ながら、最初に引いてしまった「親子関係」というカードの影響は大きいけれど、大人になってから、人生が引っくり返るような出会いを引き当てる可能性は十分にあるのだ。
このように書くと、必ず「でも、私には、そんな人はいません」という人がいる。
そして僕には、返す言葉がない。
「本当に信頼できる一人めの大人」に出会えるかどうかは、運でしかなく、「誰でも必ず出会える」とは言えないからだ。
ただ、確実に出会えるかどうかはわからないけれど、行動を起こすかどうか、チャレンジを続けるかどうかで、可能性は大きく変わる。
僕が知る限り、「本当に信頼できる一人めの大人」に出会えている人は、自分の世界を変えるために必死で動いていたし、チャレンジをやめていなかった。
いきなりベストな相手に出会える可能性は低いかもしれない。
でも、「誰も信じられない」という絶望を抱え、ときには傷つきながらも、決して腐らず、出会った人たちのうち、誰なら「マシ」で、誰を「信頼してはいけない」のかを考える。
「この人なら、もしかしたら信頼を寄せてもいいのかもしれない」と思う人に出会ったら、そう思った理由が何なのかを考え、「この人とは、なぜ合うのか」「この人とは、なぜ合わないのか」を、感覚だけではなく、きちんと言語化して考える。
そういう失敗とトライを積み重ねていくうちに、彼らの中に少しずつ、「人を見抜く知性」が育まれていったのではないかと思う。
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