「両立介護」で職場をプロデュース!仕事に好影響を与える介護のプロって?

親などの介護に奮闘することで、仕事を辞めてしまう「介護離職」。しかし、介護をきちんと続けるには、「自分第一で考えること」が重要だとされています。そこで、介護支援の専門家・飯野三紀子さんが執筆した、『仕事を辞めなくても大丈夫! 介護と仕事をじょうずに両立させる本』(方丈社)から、仕事を続けながら介護と向き合う方法について、連載形式でお届けします。

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両立介護から職場環境の改善を考える

介護と仕事の両立を実現するためには、会社にも社員にも、モチベーションが必要です。いま、仕事と介護を両立しているひとは、助けを必要としている要介護者を守るために必死に動いているひとに、ほかなりません。

その姿は、人間の尊厳を守る行動を、自ら職場に示しているのではないでしょうか。あなたの姿を見て、明日もし家族に介護が必要になったとしても、仕事を辞めずにすむのだと、ほかの社員がわかるのではないでしょうか。

また、介護をしていれば、医療、介護、福祉分野の人々と関わることになり、視野が広がります。それは職場にも影響を与えるでしょう。

介護では、さまざまな分野の専門家と関わります。

[病院のソーシャルワーカー、保健師、地域包括ケアセンター相談員]介護の相談をします。
[ケアマネジャー]「ケアプラン」を立て、助けを必要としている人の、QOL(生活の質)、安全に動くためのバリアフリー改修、ホームヘルパーの生活援助、身体介護の派遣があれば、組み合わせを話し合い、スケジュールを決定していきます。
[理学療法士]リハビリやマッサージのプログラムを話し合い工夫します。
[作業療法士]パソコンから食器までのデザインの工夫、ユニバーサルデザインの施された日用品を情報提供してもらいます。
[薬剤師]薬剤管理、飲み方のテェック、アドバイス。
[歯科医師]定期的診断や、入れ歯づくり。歯科助手の口腔ケア。
[医師]診察、本人の健康状態のチェックで医療的課題を見つけ、医療的指示を出します。
[看護師]点滴や、傷の消毒はもちろん、便秘や不眠対策、薬の飲み方のアドバイス、褥瘡防止のための体位の保ち方、体位交換や、枕やベッドの種類のアドバイスをしてくれるなど、頼りになる存在です。
[言語聴覚士]難聴、飲み込み、嚥下などの専門家。
[福祉用具専門相談員、福祉用具貸与業者]介護用ベッドや車椅子のレンタル、ポータブルトイレや浴用椅子の買い取りを手配(保険で充填されるので一、二割の費用ですみます)。
[介護施設の施設長、職員、ボランティア係]デイケアから、入所まで、あらゆるレベルで介護のサポートを担当してくれます。
[音楽療法士]音楽療法で、認知症などの進行を止め、気持ちの安定、気分の高揚をはかり健康を増進します。

地域での活動では、[認知症の人と家族の会]情報提供、相談を全国で展開しています。

ほかに、さまざまながん患者会、高次脳機能障害の会、若年性認知症の会など病気や障がい別の、集会、相談、催しをしてくれるNPO、任意団体が数多くあります。

[ケアラーズカフェや男性介護者の会]続々とできています。
[認知症サポーター]地域により呼び名が違ますが、一定の研修を受けて認知症のひとの役に立とうとする人々です。
[民生委員]地域社会の相談援助職。無給だが、民生委員法で規定されている。
[新聞配達や乳飲料配達]配達員が安否確認をするところもあります。
[傾聴ボランティア]研修を受けて、本人から受容的に話を聞いてくれて、回想療法の効果があります。

介護にかかわるITやロボット業界の動きもさかんです。ICT機器での安否確認、定点で室内の様子を写すカメラ。遠隔介護の見守りに様々な機種が開発されています。

まだまだ、多くの職種、企業、研究会(口腔ケア、飲み込みチエック、座る姿勢の研究、排泄の研究、遊びの研究などなど)が関わるのが介護市場。これからも拡大を続けるでしょう。

多種の専門職と関わり、介護保険のシステムと取り組むと、高齢社会の問題を実感できます。いままで、ジェロントロジー(老齢学)は、遠くの議論だと感じていたとしても、介護をしてみれば身近に解決すべき課題が見つかります。きたるべき25年問題(超高齢社会のピーク100万人死のとき)を、人間重視の視点から考えていきたいですね。

企業も社員も介護離職しない、させない決意をしていただくために、四つの視点を理解していただきたいと思います。

1、介護と仕事の両立を図ることで職場環境をよくしていく
2、メンタルヘルスの視点を持つ
3、仕事の集中力と生産性をあげる
4、介護の利他的行動は、人の幸福感を増す

そうです。両立はいまやコンプライアンスであり、企業倫理なのです。

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「両立介護」で職場をプロデュース!仕事に好影響を与える介護のプロって? 51jkcHLCo3L._SX337_BO1,204,203,200_.jpg「がん終末期」「認知症」といった状況の違いも踏まえ、13章にわたって介護問題の原因と対策がまとめられています

 

飯野三紀子(いいの・みきこ)

(社)介護離職防止対策促進機構 理事。ウェルリンク(株)にて「介護とこころの相談室」を立ち上げ、現在、専任チーフコンサルタント。企業の人事部経験を経て、人材紹介会社で、キャリアコンサルタントとして従事。2000年に母と2人で叔母の介護と看取りを経験。その後、母親が認知症発症、同時期に親友のうつ病介護が重なり会社員生活を断念。自身のキャリアを見直しフリーランスとして独立。心の問題を扱うべく大学で心理学を学び直し、現在は、要介護4の母を在宅介護しながら、働く人の「心の健康」と「介護と仕事両立」のための支援を行なっている。5人の介護と4人の看取りを経験。ココロとカラダのケアラボ主宰。

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『仕事を辞めなくても大丈夫! 介護と仕事をじょうずに両立させる本』

(飯野三紀子/方丈社)

「介護離職」「介護うつ」「家族間ギャップ」など、介護にまつわるあらゆる問題の解決方法が分かる「介護の指南書」。家族や親友など5人の介護と4人の看取りを経験し、悩み抱える多くの人々を支援してきた著者が、実体験に基づく実践的な介護の心得を示しています。「人生100年時代」とも言われる現代、誰にでも訪れる「介護」に備えるべし。

※この記事は『仕事を辞めなくても大丈夫! 介護と仕事をじょうずに両立させる本』(飯野三紀子/方丈社)からの抜粋です。

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