「3つの理由」で急増中!知っておきたい「空き家」問題

いま、日本では空き家が増え続けています。地方に限らず、近年は都市部でも「空き家問題」が深刻化し、特に1960~1980年代に開発された郊外の「ニュータウン」で空き家が目立つ状況です。そこで、不動産の専門家で空き家問題に詳しい牧野知弘先生に、空き家が増えている理由をお聞きしました。

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全国的に増えている個人宅の空き家

下の図にある総務省が発表した「2018年住宅・土地統計調査結果の概要」を見ても分かるように、空き家は年々増え続けています。定期誌「毎日が発見」の読者アンケートでも、「子どもは別に世帯をもっています。将来、家をどうすればいいか...」「田舎の実家の処分で困っています。価格のこだわりはないのですが」「隣が空き家。ガス漏れや不審火が起きないか...、被害が心配です」という声が届き、皆さんの関心も高いと思います。

特に注目すべき点は、20年前よりも個人宅の空き家の割合が約10パーセントも増加している点です。「今後も空き家は増えていく傾向にあります。読者の皆さんは、いま住んでいる家や実家について、どのように活用したいかを考えておく必要があります」と牧野知弘先生は話します。

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どうして空き家問題が起きるのか

「空き家」が増えている理由には、次の三つがあげられます。

一つ目は「日本人の長寿化」です。

例えば、子どもたち世代が家を持ちたいと考える年齢に達したとき、私たち世代は健在しているケースが多いと推測されます。

「昔は平均寿命が短いため、親の亡き後に、まだ若い子どもが、その家を引き継げました。いまは長寿化で、親の死などで家を引き継ぐ前に、子どもたち世代が他の便利な場所に、持ち家を構えるケースが多いです」と牧野先生。

二つ目の理由は「人口の減少」です。

日本の人口は減っているのに、新築物件は毎年、増え続けています。新築が好まれる日本では、中古物件は利用されにくいのです。

三つ目の理由は「生活様式の変化」です。

共働き家庭が増えて職場や駅、保育所に近い場所に住む人が増えました。不便な場所にある親の家での同居が減っています。これらのことが背景となり、子どもは親の家には住まなくなり、空き家が増えているのです。

都市部でも空き家の悩みや深刻

「空き家は地方だけの話ではありません。首都圏などの都市部でも空き家問題は深刻です」と牧野先生。

下の図のように1960~1980年代、都市には職を求めて地方から人が集中し、都市周辺部の郊外には「ニュータウン」が次々と作られました。同年代の家族が一斉に入居し、駅まではバス、駅からは電車で都市の中心部に通勤しました。

そして現在、ニュータウンで育った子どもたちは、都市の中心部で就職、結婚後、職場の近くに家を持ち、ニュータウンには戻って来ません。

残された両親が亡くなると、その家には誰も住まないため空き家になります。隣近所も同じ状況で、地域に空き家が増えていきます。空き家が長年放置されて老朽化し、防災、防犯、衛生面で近隣住民の生活を脅かす「特定空家」となる問題も出てきました。

■地方・市街化調整区域での「実家」の空き家問題
シニア世代は都会で就職、結婚して、郊外のニュータウンに家を建てるケースが多かったため、地方や市街化調整区域にある「実家」が空き家に。

■郊外のニュータウンでの「我が家」の空き家問題
自分の子どもが巣立ち、結婚して市街地にマンションを買うケースが多いため、郊外のニュータウンにある「我が家」がいずれ空き家に。

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取材・文/松澤ゆかり、山川寿美恵 イラスト/コウゼンアヤコ

 

<教えてくれた人>

牧野知弘(まきの・ともひろ)先生

オラガ総研株式会社代表取締役。第一勧業銀行、ボストンコンサルティンググループ、三井不動産などを経て現職。不動産顧問、不動産プロデュース事業などを行う。著書は『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)など多数。

この記事は『毎日が発見』2019年8月号に掲載の情報です。

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