わが家は仲がいいので遺産分割でもめるわけない――。そう考えている人も多いでしょう。しかし、いざ相続が開始すると、ちょっとした気持ちのすれ違いから摩擦が生じ、大きなもめごとに発展してしまうことがあります。そこで、株式会社タクトコンサルティング会長の本郷尚先生に「遺産分割で争わないために、やってはいけない8ヵ条」について教えていただきました。今回は「遺言でやってはいけないこと」についてご紹介します。
■やってはいけない(3)
住まない実家は相続してはならない
誰も住まなくなった実家をどうするか――。これは難しい問題です。売却しようと思っても価格がつきませんし、タダで引き取ってほしいと思っても難しいのが現状です。結果的に相続しても放置してしまうことが少なくありません。そんな空き家が日本中で増えています。
「しかし、住まない家でも固定資産税はかかります。雑草などで近所から苦情が来ることもありますから、放置していいことはありません」(本郷先生)。
誰も住まなくなった家は傷みやすくなりますし、庭木の枝が隣家に及んでトラブルになることもあります。それを防ぐために、地元の不動産会社などが定期的に見回りをしてくれる「空き家管理サービス」も増えていますが、費用がかかります。
いっそのこと、相続放棄をした方がいいのか――。そう考える人もいるでしょうが、注意しなければならない点もあります。
まず、一部の財産だけを放棄することはできません。放棄するのであれば、全ての相続を放棄することになります。預貯金などがあったとしても受け取れなくなります。
「放棄した人は最初から相続人ではなかった扱いになります」(本郷先生)。
例えば、妻と子が相続人の場合、2人が相続放棄すると、亡くなった人の両親や兄弟が相続人になる可能性があります。自分たちが放棄してもそれで終わりではありません。ほかの親族に影響を及ぼし、トラブルになる可能性があることを知っておく必要があります。
■相続放棄の3つのデメリット
1 全ての相続財産を手放すことになる。
2 一度相続放棄をすると2 取り消しはできない。
3 相続の順位が変わり、トラブルが発生することも。
取材・文/向山 勇 イラスト/山崎のぶこ