既に、空き家を持っている人は待ったなしの状態です。まだ空き家は持っていないが、親の家、あるいは自分の家が将来的に空き家になる可能性がある人は、いまから対策を考えておきましょう。オラガ総研代表取締役社長の牧野知弘さんにお聞きしました。
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親が亡くなると、親が持っていた財産は子どもが相続することになります。当然、家も財産の一つなので、相続の対象となります。
土地の値段が高いころは、我先に親が残した家の相続を希望し、兄弟間で争続となりがちでした。いまはというと、家の値段がつかず、誰も相続したがらないことで、争続となる事例が多いようです。
親の家を兄弟で共有名義にするとなかなか手続きが進まないことに
例えば、親の残した家を兄弟で共有名義にしてしまうと、いざこざは絶えないようです。「親の立場としては、子どもたちが争うことのないように、家をどうするつもりなのか、心身ともに元気なうちに伝えておくことをおすすめします」と牧野さん。また、このときに、家だけでなく、保険や貯蓄などのことも話し合っておくといいでしょう。
▼家の相続でもめるケース
1. 相続人の間で押し付け合う
親が亡くなり、北海道の実家が空き家に。都会に住む3人の子どもで相続することになったが、誰も住む予定はない。売却も賃貸も見通しが立たず、解体費も税金も負担したくないので、兄弟で押し付け合うことに。
2. とりあえず共有名義にして後でもめる
関東近郊の実家をすぐに売るのがはばかられ、兄弟3人の共有名義にした。数年後兄弟の1人がお金に困り売却を言い出したが、他の2人の同意が得られない。そのうち、同意をしなかった兄弟の1人が病気で亡くなり、その子どもが相続することになり、話し合いはストップしたまま。
3. 売る・売らないでもめる
遺産は実家のみ。親と同居していた長男はそのまま実家に住み続けるつもりでいる。しかし、家を出ている次男と長女は、売って現金化し、平等に分けてほしいと主張。
空き家を持ち続けると年間10万円以上かかります
今後、空き家に住む予定がある、あるいは住む予定はないが売りたくても売れない状況であれば、売れるまで維持管理が必要です。
「維持管理なんて面倒だし、そのためにお金なんて払いたくないわ」と思う人もいるでしょう。もし、維持管理をせずにそのまま放っておいたらどうなるのでしょうか。「庭の植栽が繁茂して、ご近所に迷惑をかけることになります。家が朽ち果てると、不審人物や小動物が住みつく可能性もあるでしょう。そして、粗大ゴミなどが不法投棄されたりして、気付いたら空き家がゴミ屋敷になっていたということにもなりかねません。火事にでもなったら大変です」と牧野さんは指摘します。
こんな状態にならないために、自分で手入れをしたり、家を長持ちさせるために換気をしたりなどの作業が大切です。しかし、地方の空き家の場合、行く時間がない、交通費がかかる、手間がかかるなどの理由で、誰も行きたがらないのが現状です。ただ、最近は、家主に代わり清掃や換気などをやってくれる空き家管理サービスの会社があるので利用するのも手です。
例えば、月1万円ほど払うと換気や通水、玄関前の除草など、一通りのことをやってくれます。ただし、電気や水道などの基本料金は、自分で払うことになります
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取材・文/金野和子
牧野 知弘(まきの・ともひろ)先生
オラガ総研代表取締役社長。ホテルや不動産の開発・運用アドバイザリーの他、市場調査や執筆・講演活動を展開。『[図解]実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)など著書多数。