同僚や友達とケンカしたら「すぐ謝る」が勝ち! 精神科医が教える 「言い争い」のマナー

家族に仕事、人間関係など、人生にはさまざまな悩みがつきもの。精神科医として、70年近く働いてきた中村恒子さんの著書『うまいことやる習慣』(すばる舎)には、そんな悩みとの向き合い方や受け流し方のヒントが詰まっています。多くの人を勇気づけてきた言葉から厳選して、連載形式でお届けします。

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言い争いのあとは、先に謝るが勝ち。しょうもない我を張ると、居場所がなくなっていく。

働いてると、どうしても人との摩擦は避けて通れないこともあるもんです。

私も同じチームの看護師さんや助手さんに「これはどうしても言っておかんといかん」、「見過ごさずに、ハッキリさせておかんと大変なことになる」という場面に遭遇することもあります。

そういう場合は、「ちょっと話があるんやけど、時間とってもらえるやろか?」とお願いして、まずじっくりその人と話し合うようにするんやけども、ときには意見が分かれることもある。

意見が分かれるどころか、そもそも相容れないこともあったりします。

「そうか、あんたはそう考えるんやな。ちょっと私とは意見が違うんやけど、ここのところだけはこっちに合わせてもらえないやろか?」

「私のほうも代わりに~のところは、あんたのやり方に合わせるから」

といった感じで、なんとかお互いにゆずり合ったり、落としどころを見つけようとがんばるんやけど。

でも、どうしてもその話し合いの場では決着がつかなかったり、スッキリと心地よい解決にならなかったりすることも何度かありました。

相手がなんとなく納得していないなとか、相手が腹を立てたり機嫌を損ねたりして、ギクシャクしたまま話し合いが終わったなあと思ったら、次の日は自分から声をかけるように心がけてます。

「昨日はごめんや。こっちもちょっと言いすぎたかもしれへん」

「気ィ悪くさせたんやったら、謝るわ、許してや~」

そんな感じで、気軽に声をかけて、こっちから軽く謝る。

こっちから頭を下げて歩み寄ったら、たいてい相手も歩み寄ってくれますわ。

「いやいや、こっちも昨日はすみませんでした」

「あれからよく考えてみたら、先生の言っていることも理解できました」

っていう感じに、相手の雰囲気も丸くなることがほとんどです。

だからちょっと言いすぎたな、相手の気を悪くさせたなと思ったら、相手が若いスタッフでも患者さんでもこっちからさっさと謝ってしまいます。

職場の仲間とギクシャクしているほど、居心地の悪いことはないからねえ。

私自身、貧乏な田舎者が戦後のどさくさにまぎれて医者になったくらいやと思っているから(笑)、プライドはないんです。

反対に、謝るのがヘタな人は変に我が強いんでしょうな。

「こっちから下手に出たら沽券にかかわる」とか、「こっちから先に謝ったらなめられるかもしれん」とか、「なんで年下のやつにこっちから頭を下げないといけないんや」とか、そんなしょうもない「我」は、できるだけ捨ててしまったほうがラク、ラク。

私の家には、同じ敷地の中に長男夫婦も住んでいるんやけど、お嫁さんに対しても謝るのはまったく平気です。

「この前はごめんやで~」「悪かったなあ」って、ちょっとした行き違いが起こったら、私から声をかけていくようにしてます。

ありがたいことに、嫁姑のドロドロは起こったことがありませんな。

こっちが歳をとればとるほど、若い人や立場が下の人が、表面上はこっちに合わせてくれることも増えるのやけど、それに胡坐(あぐら)をかいていてはいけないと思ってます。

とにかく「己のほうがえらいんや」という我はできるだけ捨てたほうがええ。

自分もラクやし、まわりの人もラク。

それに、そういった我がなければ、平気で「ちょっと教えてや」「ちょっと助けてよ」と若い人に尋ねられるし、結構お得です(笑)。

私は携帯電話でメールもするし、パソコンで電子カルテにもヨタヨタと打ち込みながら診察するんやけど、これもみんな、若い人に教えてもらいながらやっているんですわ。

今もわからないことができたら、「ごめん、ここどうしたらええんやろ?」って尋ねてます。

「へえ~、こうするんやね。なるほどなあ。若い人にはかなわんわ」

「助かったわ、ありがとうさん。また教えてや」

年下の医者からも看護師さんからも教えてもらうことが多いけど、丁寧にお礼を言って喜んでいたら、また次も教えてくれはる。

手のかかる年寄りやと思われているのかもしれへんけど、そうやって今も若い人に助けてもらって感謝しながら働けてます。

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同僚や友達とケンカしたら「すぐ謝る」が勝ち! 精神科医が教える 「言い争い」のマナー 105-H1-umaikoto.jpg「仕事」「人間関係」「生き方」などの6テーマから、キャリア70年を誇る精神科医が考え至った37のメッセージがつづられています

 

中村恒子(なかむら・つねこ)
1929年生まれ。精神科医。1945年6月、終戦の2カ月前に医師になるために広島県尾道市から1人で大阪へ。混乱の時代に精神科医となる。子育てを並行しながら勤務医として働き、2017年7月(88歳)まで週6日フルタイムで外来・病棟診療を続けた。「いつお迎えが来ても悔いなし」の心境にて生涯現役医師を貫く。

奥田弘美(おくだ・ひろみ)
1967年生まれ。精神科医・産業医。日本マインドフルネス普及協会代表理事。

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『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』

(中村恒子・奥田弘美/すばる舎)

悩んだり、立ち止まったり、いろいろあるのが人生。本書は、そんな人生をたんたんと生きてきた精神科医・中村恒子さんの波乱万丈な半生を軸に、「うまいことやる考え方」がつづらています。彼女のどこまでも自然な姿に、「こんな生き方でもいいのか」という気づきを与えてくれる一冊です。

※この記事は『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』(中村恒子・奥田弘美/すばる舎)からの抜粋です。

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