「歳をとったら『もっともっと』を捨てたほうがラクや」キャリア70年の精神科医が考える「人間の幸せ」

家族に仕事、人間関係など、人生にはさまざまな悩みがつきもの。精神科医として、70年近く働いてきた中村恒子さんの著書『うまいことやる習慣』(すばる舎)には、そんな悩みとの向き合い方や受け流し方のヒントが詰まっています。多くの人を勇気づけてきた言葉から厳選して、連載形式でお届けします。

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「幸せでなければいけない」と、思わないほうが幸せ。余計な荷物は、おろしていく。

自分が幸せか不幸か、えらく気にする人がいます。

そりゃもちろん、人間は幸せなのがいちばんです。

でも、「幸せでなければいけないか」と言えば、そんなことはまったくありません。

そもそも、幸か不幸かなんて、大して意味のないもんやと私は思っています。

たいていの場合、幸せかどうかという判断は、「他の誰かと比べて自分はどうか」と考えて決める人が多いんやないでしょうか。

収入の額、家の場所や広さ、子どもの学校や成績、何を食べたとか、どれだけおしゃれやとか、そんなことで幸せか不幸せかを判断しようとしたら、キリがありません。

何をするにしても、自分が好きでやっているならええんやけど、「他人がこうやから、自分もそうならねばならない」っていう基準になってしまうと、必ずしんどくなってきます。

「こうあらねばならない」っちゅうのは、荷物みたいなもんです。

自分が自分に好きで課すなら一向に問題ないんやけど、他人のあれこれを基準にすると、重くて重くて仕方ない。

ストレスでしかありません。

本当はそうしたくないのに、無理をして背負っているわけやから、どんどんと身動きが取れなくなっていきますわ。

そうすると、「私はこんなに辛抱しとるんやから、あんたもこうあるべきや」と人に強要をしたりする。

そんなふうになると、悪循環になってきますわな。

でもね、単純な話で「こうあるべき」と強く思ってがんばりすぎているときは、「欲求不満」なことが多いんですわ。

しかも、欲求不満といってもその中身は、「がんばっていてすごいね、ともっと人に褒められたい」「がまんしているんだから、もっといい思いをしたい」とか、原因はちょっとしたことだったりするもんなんです。

でも、他人さんの価値観にばっかり縛られていたら、自分の欲求不満の正体に気づけません。

若いころは欲求不満をバネにして、「もっともっと」とがんばるのも悪くないとは思います。

それだけのエネルギーも伸びしろもあるやろうしね。

でも、だんだん歳をとってきたら、ちゃんと己を知って、「もっともっと」を一つずつ捨てていったほうがラクやと思います。

毎日がつらいなあと思うんであれば、何かを足していくのではなく、「これで上々やろ」と、納得していく道もあるんやないでしょうか。

世間ではそれを「あきらめ」と言うかもしれへんけど、あきらめることが悪いことだとは私は思いません。

「あきらめる」というのは、もともとは「物事を明らかにする」っちゅうのが語源なんやそうです。

つまり、あきらめるというのは、自分の生き方をハッキリさせてやることでもあるんではないでしょうか。

お金も暮らし方も、「己にとってのほどほど」を知らないけません。

出世する人生も、しない人生も、子どもがいる人生も、いない人生も、人と比べたところに正解はありません。

自分で、納得していくことなんです。

今大切にすべきことを中心にして、ぼちぼち行動していくことです。

いろいろ試したけど、どうしても今のままでは納得でけへんというなら、現実的にできることを考えて、ちょっとずつ新しいことをやってみればええと思います。

他人さんと比べて幸せかどうか。

そこに己が本当に求めている答えなんてありません。

そもそも幸せなんて感覚は、非常に不安定で頼りない感覚なんですわ。

めったにずっと長続きしません。

そんなに大げさに考えず、喜びがあれば素直に喜んで楽しんだらええし、やらなければいけないことができたならば、「しゃあない」と割り切ってたんたんとやる。

人生その繰り返しと違いますか?

「こうあらねばならない」と思っていることのほとんどは、「そんなことないんちゃう?」と軽~く考えてみてください。

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「歳をとったら『もっともっと』を捨てたほうがラクや」キャリア70年の精神科医が考える「人間の幸せ」 105-H1-umaikoto.jpg「仕事」「人間関係」「生き方」などの6テーマから、キャリア70年を誇る精神科医が考え至った37のメッセージがつづられています

 

中村恒子(なかむら・つねこ)
1929年生まれ。精神科医。1945年6月、終戦の2カ月前に医師になるために広島県尾道市から1人で大阪へ。混乱の時代に精神科医となる。子育てを並行しながら勤務医として働き、2017年7月(88歳)まで週6日フルタイムで外来・病棟診療を続けた。「いつお迎えが来ても悔いなし」の心境にて生涯現役医師を貫く。

奥田弘美(おくだ・ひろみ)
1967年生まれ。精神科医・産業医。日本マインドフルネス普及協会代表理事。

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『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』

(中村恒子・奥田弘美/すばる舎)

悩んだり、立ち止まったり、いろいろあるのが人生。本書は、そんな人生をたんたんと生きてきた精神科医・中村恒子さんの波乱万丈な半生を軸に、「うまいことやる考え方」がつづらています。彼女のどこまでも自然な姿に、「こんな生き方でもいいのか」という気づきを与えてくれる一冊です。

※この記事は『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』(中村恒子・奥田弘美/すばる舎)からの抜粋です。

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