「最近の若い人」の曲がわからないわ...という人に。作詞家が贈る「50代からの音楽の楽しみ方」

50代になると頭によぎる「終わり」の迎え方。人生の後半について、作詞家で作家の吉元由美さんは、「これからがクライマックス」と言います。今回は、著書『エレガントな終活』(大和書房)から、吉元さんが考える「50歳からの女性の生き方」のエッセンスをお届け。これからの人生が幸せになるヒントが散りばめられています。

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音楽は身体も心も活性化する

毎日の生活の中に、音楽は流れていますか?

最近、新しいCDを買いましたか?

ダウンロードはしたでしょうか?

大人が音楽を聴かない。

CDが売れない。

この話題は音楽業界の中で挨拶がわりになっています。

そのレベルを超えてしまっているかもしれません。

昔を思い出してみると、十代の頃からずっと音楽は生活の一部としてありました。

好きなアーティストの新譜が出ると必ず聴き、友達と情報を交換したものです。

ジャンルにこだわらず、いいな!と思える音楽は何でも聴いていました。

ところがいつの頃からか、家で音楽をかける頻度が減ってきました。

結婚した頃からでしょうか。

子どもが生まれてからは、さらに減りました。

余裕がなくなったのか。

静かな空間に落ち着きを感じるようになってきたこともあると思います。

音楽を聴くことから離れているとはいえ、好きな曲を編集したり、お気に入りのクリスマスソングを集めて編集するなど、ときどき集中的に音楽を聴くことがあります。

そんなとき、自分の中の音楽が欠乏していることを感じます。

音楽には力があります。

心に直結しているというのでしょうか、気持ちを昂揚させ、感情を揺らし、記憶を呼び覚まします。

気持ちを癒やし、リラックスさせてくれます。

音楽が脳に与える影響について証明されたのは最近のことだそうです。

好きな音楽を聴いているとき、ドーパミンが出て、βエンドルフィンが分泌されます。

このホルモンにはモルヒネの六倍ほどの鎮痛効果があり、たくさん分泌されるとランナーズハイのような状態になるそうです。

音楽を通して脳を活性化させるリハビリテーションによって、認知症の症状が緩和され、痛みも緩和される音楽療法が介護施設や医療現場に取り入れられるようになりました。

また、最近ではDJ OSSHY(オッシー)さんが「高齢者ディスコ」という活動を始めました。

老人施設でディスコ体験をしてもらう。

立てる人は立ち、椅子に座ったままの人は無理のないように手を動かしてもらう。

世代的に、モータウンやビートルズを聴いていた人たちもいますから、青春時代を思い出し、身体を動かす。

脳も刺激される。

とてもいい取り組みだと思います。

私たちがその年代になったとき、さらにパワーアップしているのではないかと想像します。

五十代の初めに手術をしたとき、手術室に向かう直前までチャカ・カーンの『アイム・エヴリー・ウーマン』とアンドレア・ボチェッリの『大いなる世界』を何回も何回も、ヘッドフォンをつけ大音量で繰り返し聴きました。

そうして自分を鼓舞し、よしっ!と気合を入れて手術に臨むことができました。

音楽の力に助けられたのです。

たとえ恋から遠く離れていても......

いまの若いアーティストたちの曲はわからないし、馴染まない。

良さがわからない。

もうこれは仕方のないことです。

でも、ときどき楽しくなる曲に出会うことがあります。

それはそれで楽しめたらいいと思うのです。

若い頃に好きだったアーティストの曲をもう一度聴きなおすと、音楽と記憶がつながり、懐かしさや、その頃感じた気持ちが蘇ります。

ときには、そんな時間に浸ってもいいのではないでしょうか?

どこかに行ってしまった恋心をたまに思い出してみるのも素敵だと思います。

好きな人と会う日のそわそわとした気持ち。

どうにもならないふたりの関係に、胸がつぶれそうになった日のこと。

会えないときのせつなさ。

当時は、いろいろな気持ちに彩られていた日の自分がずっと続くと思っていたものでした。

でも、いつしかそんな日々から遠くまで歩んできてしまったのです。

もちろん、その間に私たちが味わったさまざまな感情も出来事も人生を彩り、そして多くの学びを与えてくれました。

想い出に浸るのではなく、音楽を通してその頃のきらきらした気持ちをエネルギーにするのです。

私たちが聴いていたアーティストたち、いまも精力的にライブ活動をしています。

海外アーティストの来日公演に行くと、音楽の良さを改めて痛感します。

私が歌詞を多く手がけた杏里や山本達彦さんのライブ会場はいつも満席、年を重ねてもライブの臨場感を味わいたい。

クラシックでもジャズでもポップスでも、その日の気分で楽しみましょう。

最近の、八〇年代のサウンド、テイストを取り入れた若いアーティストもいい感じです。

Suchmos(サチモス)、THREE(スリー)1989、Nulbarich(ナルバリッチ)を聴きながらドライブしていると、(まだまだイケるわ)と思っている自分がいます。

これも人生のスパイス、そんなことを思ってしまう自分の滑稽さを笑うことも、またおもしろいのです。

50代を迎えた全女性に贈る「エレガントな終活」記事リストを見る

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杏里、松田聖子、中山美穂などのアーティストに作詞を提供する著者が、50代の女性へ贈る幸福論です

 

吉元由美(よしもと・ゆみ)

1960年、東京都生まれ。作詞家、作家。洗足学園音楽大学客員教授、淑徳大学人文学部表現学科客員教授。成城大学文芸学部英文学科卒業。1984年、作詞家デビュー。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、石丸幹二、加山雄三ら多くのアーティストの作品を手掛ける。エッセイストとしても幅広く活動し、著書多数。

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『エレガントな終活~50歳から、もっと幸せになる~』

(吉元由美/大和書房)

仕事、パートナー、老親、子どもとの関係が激変する女性の50歳。この先の人生に必要なことは、大切にしたいことを「取捨選択する」ことです。自分を愛し、より自由で幸せな女性になるために、50歳となった今からできる新しい「終活」を提案しています。

※この記事は『エレガントな終活~50歳から、もっと幸せになる~』(吉元由美/大和書房)からの抜粋です。

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