いまなお低収入、非正規といった問題にあえぐ就職氷河期世代。安定した仕事を得て幸せを手に入れるのは、すでに手遅れなのでしょうか? 東京しごとセンター正規雇用対策担当課長の上野芳江さんに、いまの氷河期世代の「就活」事情を聞いてきました。
氷河期世代を支援する3つのプログラム
兵庫県の宝塚市が2019年8月、就職氷河期世代を対象に職員の募集を行いました。
すると、定員3人に対し1816人の応募があり、1次試験を1635人が受験するという、倍率が500倍以上の狭き門になったのです。
いまも苦しむ氷河期世代の現状が、改めて浮き彫りになりました。
このような状況の中、子どもたちはどのように職を探していけばいいのでしょうか。
独力では難しいのも現実で、誰かのサポートが必要な場合も多いでしょう。実は、そういう人たちを支援する施設があるのです。
例えば、国が全国150カ所以上に設置している「サポステ」と呼ばれる地域若者サポートステーションの中には、通常は対象が39歳までのところ、就職氷河期世代に合わせて44歳まで対象を拡大しているところもあります。
ほか、自治体単位で独自の支援策を行っているところもあります。
東京都の雇用促進事業を請け負う、「東京しごとセンター」もその一つです。全世代を対象に都内の企業への就労支援を行う施設なのですが、若年層、ミドル層、シニア層、女性と、層ごとに独自の就労支援を行っているのが特徴です。
就職氷河期世代を含む30~44歳のミドル層に対しては、下のように「就活エクスプレス」「Jobトライ」「東京しごと塾」と、就職活動の状況に応じて、3つの就労支援プログラムを用意しています。
東京しごとセンター正規雇用対策担当課長 上野芳江さん
東京しごとセンターが30〜44歳に用意する3つの就労支援プログラム
中でも特筆すべきなのは、「Jobトライ」です。昨年から始まったばかりの新しい支援策なのですが、実際に採用を検討している企業を訪れ、最大20日間の実習を行います。就職前に職場体験ができるため、就職後に「思っていたのとは違う」となることがお互いに少ないという利点があるのです。
Jobトライの流れ
「アドバイザーが状況を聞き、一人一人に適切なプログラムを提案しています」と、上野さん。
専任のアドバイザーが、就職後に定着するまでサポートしてくれるそう。氷河期世代は、これらの支援をうまく利用して"就活"を進めていくことを考えてみてはどうでしょうか。
大手企業も氷河期世代の採用を行っています
政府が開始した集中支援プログラムを受けて、民間企業にもこの世代の人たちを採用しようという動きが広がってきています。総合物流大手の山九も、その一つです。
9月からこの世代を対象に、今後3年をかけて約300人を採用する活動を始めました。
未経験者に対しては、必要に応じて2~3日間の職場実習も実施される予定です。
青山勝巳人事部長は「未経験者も経験者も関係なく、適性を見極めていい人材を採用したい」と話しています。
総合物流大手・山九の青山勝巳人事部長
取材・文/仁井慎治