私の人生、本当にこれで良いの...⁉人生最大の岐路「中年期の危機」をどう乗り越える?

仕事で転勤や異動、自分や家族が病気を患うなど、人生の転機を迎える可能性が高い中年期。急な報せに焦るかもしれませんが、うまく乗り越えれば残りの人生を有意義に過ごすチャンスにもなります。そこで、『自分らしく生きる! 40代からはじめるキャリアのつくり方:「人生の転機」を乗り越えるために』(石川邦子/方丈社)から、女性が抱えるライフキャリアの悩みとその解決方法について、連載形式でお届けします。

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中年期は人生最大の「岐路」

中年期は、自分を取り巻く環境が大きく変わる時期です。

様々な身体的、社会的、家庭的、心理的な変化が起こると言われています。

身体的変化としては、白髪や老眼など、年齢を感じさせる変化があるでしょう。社会的変化としては、組織の中で求められる役割が変わります。現場の最前線から管理職などの立場に変わったり、人に教わる側から人を指導する側に変わったり。仕事上の自分の能力や地位の限界も見えはじめることも変化のひとつです。子どもの成長や親の介護など、家族の状況も過渡期を迎えます。

そして、こうした身体的・社会的・家庭的変化に影響されて、心理的な危機に遭遇しやすいのも中年期の特徴です。様々な状況が変化するがゆえに、今までのやり方ではどうもうまくいかないと感じはじめ、葛藤を抱えやすくなります。

「もう若くはない」という思いと、「いや、まだまだできるはずだ」という、相反する思いの間で揺れてしまう。安定と不安定、若さと老い、獲得と喪失などの間で翻弄されてしまいがちなのです。

このように「自分の人生は本当にこれで良かったのか」などと思い悩みはじめる心理的な葛藤のことを「中年期の危機」または「ミッドライフ・クライシス」と言います。

こうした変化は多かれ少なかれ、誰にでも訪れるものですが、どうしても「自分だけがつらい」という、取り残されたような気持ちになりがちです。この危機の脱し方は、その後の人生を左右しますから、人生最大の「岐路」とも言えます。

中年期をどう位置づけるか

では、キャリア理論や心理学の識者は、中年期をどう位置づけているのでしょうか。心理学者の河合隼雄氏は、中年期を「思秋期」と呼びました。これは、「思春期」を、中年期に置き替えた言葉です。

心はまだ子どもなのに身体が急激に大人びることで、心と身体のバランスが崩れてしまい、精神的に不安定になる思春期と同じように、心はまだ若いつもりなのに、老いをはじめとした様々な変化を突き付けられ、精神的に不安定になりやすい時期だということを表しています。

生涯発達の論者であるレヴィンソンは、ライフサイクル理論の中で、成人期の4つの時期の発達を四季になぞらえて、中年期を「秋」としました。

「思秋期」やレヴィンソンの理論に限らず、中年期を人生の秋と形容することは多いと思いますが、この「秋」をどう捉えるのか。「メランコリックな季節」ではなく、「紅葉の綺麗な味覚の秋だ」と捉えると、楽しみの方が多くなってくるのではないでしょうか。

さて、心理学者のユングは中年期以降を「個性化の時代」と言っています。個性化とは「本来の自分」という意味です。中年期になって、本来の自分らしさを取りもどし、昔の夢を思い出して近づいていく人もいます。

ユングは40歳を「人生の正午」と呼び、成人から中年への移行期を、人生の午前から午後への移行期と表現しました。午前は「これから」というイメージですが、午後は日没に向けて「暮れていく・老いていく」イメージと捉えられます。

とはいえ、それがただ下り坂になってしまうということではなく、精神的な発達は、中高年になっても一生続くものだという視点で捉えられています。そのうえで、人生後半の課題は、自分のそれまでの人生で生かされていない、潜在的な性質や能力を生かして、より「自分らしく」なることだと考えたのです。これがすなわち個性化です。

社会や周囲との調和を保ちながら、さらに個性化することができるというわけです。

私は研修や講演のとき、ややこしい理論をわかりやすいイメージで捉えていただけるような映画や小説などを紹介することがあります。『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』という映画は、まさに個性化だと思います。この映画の主人公は、一流企業に勤める49歳の男性です。母が倒れたとの知らせを受けて、故郷の島根に帰ります。そこに親友の事故死の知らせがあり、それをきっかけに仕事一筋の人生に「俺は、こんな人生を送りたかったのか・・・・・・」と疑問を持ちはじめます。そして会社を辞め、子どものころの夢だった故郷の電車の運転手になるお話です。

中年期から個性化していく姿が描かれており、とても参考になります。小説も出ていますので、よかったら読んでみてください。

中年期の課題(世代性)の意味

発達心理学者のエリクソンは、社会的に達成すべき発達段階という観点から発達を捉え、それぞれの段階に獲得すべき課題があるとして8段階のライフステージを示しました。エリクソンによると、中年期の課題は「世代性 対 停滞」で、次の世代を育てることへ積極的に関わることだとしています。

この課題を獲得できなければ、キャリアは停滞してしまい、キャリア・プラトーに陥る危険があります。キャリア・プラトーとは、キャリアの発達が高原状態に達して、伸びしろのない停滞期を意味します。

たとえば、これ以上自分が昇進できないとか、期待されていないと判断してしまい、新しい仕事に挑戦したり、そのための能力の開発に励んだりという意欲をなくしてしまうのです。

中年期の課題である「世代性」を獲得できず、「もう若くはない」、「今さら遅い」と自分への諦めの感覚に捉われ続けると、キャリアの発達も止まり、閉塞感を抱えるようになってしまいます。

ネガティブな諦めの感覚、すなわちキャリア・プラトーに陥ったときには、それが危機であるということを客観的に認識して、そこから脱する準備をしましょう。そのためには、今までの人生を肯定的に振り返り、新たな存在価値を見出していくプロセスが必要です。

大丈夫、落ち込んだときが転機のはじまりです。

「ピンチはチャンス」と捉えて、自分の未来に関心を持って、じっくり考える時間を持つことからはじめていきましょう。

059-syoei-40dai.jpg中年期にぶつかる仕事や人生におけるキャリアの悩みごとに解決法、対処法を5章にわたり解説

 

石川邦子(いしかわ・くにこ)

Natural Will代表。キャリアコンサルタント。1977年、IT関連企業トランスコスモス株式会社入社。1994年、役員に就任。オペレーション部門の統括や人材戦略・キャリアモデル構築、採用・研修などの統括を担当する。ほかに各種事業の立ち上げおよび運営管理、 韓国でのアウトソーシング会社運営指導等に携わる。同社専務取締役を経て、2003年、キャリアデザインおよびストレスマネジメントを支援するNatural Willを設立、代表に就任。日本体育大学、法政大学、白百合女子大学でキャリア教育を担当。2011年、日本産業カウンセリング学会にて学術賞を受賞。2011年からJAICO東京支部キャリア関連講座部の部長など、現在もキャリアコンサルタントの育成に務めている。また、メンタルタフネス研修、メンター研修、キャリアデザイン研修、女性活躍支援講演など講師を務める一方、カウンセラーとして企業内のキャリア支援など多方面で活躍中。シニア産業カウンセラー、1級キャリアコンサルティング技能士、メンタルヘルス・マネジメント検定I種、英国IFA認定アロマセラピスト。著書に『ダメな上司は耳で聞く』(現代書林)がある。

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『自分らしく生きる! 40代からはじめるキャリアのつくり方:「人生の転機」を乗り越えるために』(石川邦子/方丈社)

異動や降格、転勤または独立、病気にけが…40歳以降の中年期を迎える人々に訪れるさまざまな人生の転機。自分の経験を生かせる中年期だからこそ、この転機をうまく乗り越え、その後のキャリアと人生をより良くするためのヒントが詰まった一冊。

※この記事は『自分らしく生きる! 40代からはじめるキャリアのつくり方:「人生の転機」を乗り越えるために』(石川邦子/方丈社)からの抜粋です。

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