縁起でもないこととはいえ、ある日突然親の死に直面する可能性はだれにでもあります。そのときに困るのが親の死後のお金の問題。遺産は前もって内容を知っておかないと、手続きに膨大な時間がかかったり、負債を抱えてしまう可能性も...。親が元気なうちにしっかり把握しておきたい相続問題のあれこれ。ぜひ、知っておきましょう!
『レタスクラブ』2018年11月号で特集された記事をご紹介します。
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金融資産について知っておきたいこと
預金者が亡くなったことが分かると金融機関は口座をクローズするため、預金を下ろせなくなります。使えるようにするには名義変更の手続きが必要ですが、それには、「この口座は誰が引き継ぐ」と決めたうえで、所定の書類に相続人全員が署名・なつ印(実印)して提出する必要があります。これは、銀行も証券会社も同様です。
どこにどれだけ財産があるか分からないと財産の分け方が決められず、名義変更の手続きができません。金額は無理でも、せめて預けている金融機関名だけは聞いておきましょう。
また、親に多額の借金があるとたいへん。原則3カ月以内に相続放棄しないと借金も引き継ぐことになるので、ぜひ聞き出しておくべきです。
預金口座・証券口座
●金融機関名だけでも分かれば何とかなる
金融機関名と大体の金額、通帳の保管場所まで教えてもらえればベストですが、金融機関名だけでも分かれば、イザというとき金融機関に調べてもらえます。実家の郵便物から預金口座が分かることも。問題はネット取り引き。通帳も郵便物もないため、本人に聞いておくしかありません。
借金
●相続放棄しないと借金も引き継ぐことに!
相続ではプラスの財産のほか、マイナスの財産も引き継ぎます。財産より借金が多いときは、原則3カ月以内に相続放棄の手続きが必要。また、誰かの借金の保証人になっている場合も、相続放棄しないと引き継ぐことになります。実家が事業を行なっているような場合は、特に注意して。
保険
●保険の見直しを話題にして会社名を聞き出そう
財産分けが終わらなくても、生命保険は受取人が申請すれば保険金を受け取れます。保険証券がなくても、加入している保険会社さえ分かれば調べてもらえます。親に「保険の見直しをしてみたら?」と提案すれば、「この会社の保険に入っているのよ」と教えてくれるかも。
口座の数が多すぎると管理できず相続手続きも膨大に
今50代以上の人には、銀行や証券会社に多くの口座を持っている人が少なくありません。それは、銀行の破綻に備えて少しずつ預け分けたり、有利な運用先を求めて次々に口座を作ったりしたから。でも高齢になると、もう管理不能。さらに、相続手続きは金融機関ごとに行なうため、万一のときはたいへんなことに。「私、結婚前の口座を解約したのよ」などと話しかけ、口座の整理をすすめてみて。
親が多くの金融資産を持っていても、手続きしないことには引き継げません。若いうちは親も工夫をこらして管理していたものが、年を取るにつれて、ほったかしになりがち。親が元気なうちに、最低限のことは聞いておきましょう!
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取材・文/有山典子 イラスト/前田はんきち