人間関係は「笑い」でうまくいく!フランス人が友人をもてなす最大の武器

歳を重ねるとともに増えていく、病気、孤独、お金などの不安...。世界共通の悩みと思いきや、「フランス人」は老いることを「人生の収穫期」と考えて、楽しく過ごしているそうです。外交官から仏修道会の介護ボランティアに転身した賀来弓月さんの著書『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は老いを楽しむ』(文響社)から、フランス流の「人生を前向きにとらえる10のヒント」を連載形式でお届けします。

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フランス人にとってジョークは「エスプリ(才気)」である

「フランス人は、食べること、飲むこと、議論をすること話をすること、笑うことが好きな国民だ」とよくいわれます。

フランスの高齢者たちは、これらのことが老いを生きる自身の幸福に繋がると考えています。

たしかに、フランス人はよく笑います。欧米では、イギリス人のユーモア(ジョーク)対フランス人のエスプリ(才気)という形で、両者の笑いがよく比較されます。

パリ在住の元大学教授(比較文学)(ボランティア)は、「英国人は、自分を材料にしたジョークをいう。そこには、優しさ、親切さ、温情がある。フランス人のジョークには、他人を揶揄するエスプリが効いており、知的で、風刺的で、皮肉たっぷりで、辛辣である。だから、フランス人はときどき外国人を非常に傷つけることがある」と言っています。

私自身は、多くのフランスの高齢者から無邪気で楽しいジョークを耳にしてきたので、フランス人の穏やかなユーモアの精神も素晴らしいと思っています。聖職者(神父、修道女)も、よくおもしろいジョークを言いますし、修道会の老人ホームでも笑いというものが重視されています。修道会の創始者聖ジャンヌ・ジュガン(1792年~1879年)は、若い修道女たちに「老人には笑いが必要である」と言い聞かせていたそうです。

笑いは、医学的にも高齢者の自立生活機能の維持に大きく寄与すると考えられています。フランスのレンヌの老人ホームのある神父は、寂しげであまり笑わない高齢者たちのことをいつも心配していました。高齢者が必要としているのは「無邪気な心から自然にわきでるおおらかな笑いだ。

そのような笑いは、他の人に向けられるときには、その人に対する優しさや愛情表現そのものになる」とこの神父は始終力説していました。

フランスの老人ホームでは、たびたびワッと笑い声が上がる場面に遭遇しました。例えば、私が耳にしたジョークにこんなものがありました。「ばあさんがね、今はやりの米国式のドラッグストアでコンドームを買おうとしてレジに行ったの。すると、気のきかない若い女店員がね。マイクで広い店内のどこかにいるらしい店長に向かってこんなことを大声で叫んだのよ。『店長、コンドームに高齢者割引はありますか?』と。さすがに、ばあさんも、これはたまらんと、レジカウンターにコンドームを放り出して、表に逃げ出したのよ」

高齢者の性愛の欲求を自然なものと考えるフランスの高齢者たちは、時と場合をわきまえる節度は守りながら、こうしたきわどいジョークも楽しみます。

ロレーヌ地方の老人ホームの大食堂で働いているときのことでした。テーブルの間を移動しながら、高齢者たちに料理を配っていた若い修道女が、ステンレス製の大鍋の蓋をうっかり床に落としました。けたたましい物音が響き、食事をしていた高齢者たちは、驚いて飛び上がらんばかりでした。すると、この修道女はすかさず、唖然としている老人たちに向かって、こう言い放ちました。

「これは、みなさんのために私が作曲したモダンミュージックですよ。私だって少しは音楽の才能がありますわよ。さぁ、ポカンと開けた大口に食べ物を運んでくださいませ!」

フランスの女流画家アンヌ・バラン(1909~1995)は、「老いを他人に対して愛想の良いものにするために、笑って暮らす愉快な老人になりましょう。とにかく、老人の評判はとても悪いのです」(Soyons vieux gaiement pour rendre la vieillesse aimable. Elle a si mauvaise reputation) といっています。

ところで、フランスのプロバンス地方には「年をとると、吝嗇、用心深さ、聡明さ以外は、すべてが無くなっていく(Tout se diminue en la vieillesse hors d' avarice,prudence et sagesse)という諺もあります。

そして、フランスの法学者・哲学者ジョセフ・ミシェル・アントワヌ・セルヴァン(1737~1807)の言葉に、「老いは愉快なことを追い求めなければならない。そして、その愉快なこと自体は若さを追い求めるのだ」(La vieillesse est obligee de courir apres la gaiete, qui d'elle-meme cour apres la jeunesse)」というのがあります。

笑いは、人間同士が楽しくつながる最大の武器。フランスの高齢者たちは、そのことを良く心得ていて、心から笑えるジョークを交換しあいます。特にフランスの高齢者は誰もが心から笑える無邪気なジョークは仲間への最大のもてなしだと考えているのです。

『老いは愉快なことを追い求めなければならない。そして、その愉快なこと自体は若さを追い求めるのだ』
La vieillesse est obligee de courir apres la gaiete, qui d'elle?meme cour apres la jeunesse.

フランス人に学べば老後は楽しくなる!『60歳からを楽しむ生き方』記事リストはこちら!

051-syoei-france.jpg「美しさとは何か」「オシャレの楽しみ方」「孤独の捉え方」など10の項目から、老いを楽しむフランス人の人生観が分かります

 

賀来弓月(かく・ゆづき)

1939年、愛知県生まれ。1960年外交官上級試験合格、61年名古屋大学法学部卒、外務省入省、英オックスフォード大学大学院留学(外務省在外上級研修員)。外務省退職後、清泉女子大学非常勤講師、NPO法人アジア近代化研究所特別顧問。主な著書に『内なるものと外なるものをー多文化時代の日本社会』(日本経済評論社)など。

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『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は老いを楽しむ』

(賀来弓月/文響社)

年齢を重ねると孤独感や焦燥感、死への恐怖心にさいなまれる…。そんな不安を、フランス人が考える「老いの愛し方」で払拭してくれる一冊。フランスの高齢者がオシャレや食事をどう楽しんでいるのか、その生き方を見習えば、老いも光輝く人生の一部になるはず。

※この記事は『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は老いを楽しむ』(賀来弓月/文響社)からの抜粋です。
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