「親が認知症になってほしくない...」介護のことも考えて、そう思う人も多いでしょう。東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生は「認知症は予防できる病気で、何もしないのはもったいない」と言います。そこで藤田先生の著書『親をボケさせないために、今できる方法』(扶桑社)より、食事と生活の中での「認知症の予防策」についてご紹介します。
ボケ防止にとても効く、コーヒーと緑茶
「カフェインは身体に悪い」と思っている高齢世代は、とても大勢います。
それは、カフェインの覚醒作用にあるのだと思います。
カフェインを含む飲料をとると、目が冴えます。
神経が高ぶって、眠気がとれます。
このため、夜にカフェインをとると、脳の安眠がさえぎられて、たしかによくありません。
でも、朝や昼間は、その覚醒作用がよい方向に働きます。
また、疲れを抑える作用や、血管を広げて血流をうながす作用、老廃物の排出をうながす利尿作用なども、カフェインのよい働きです。
たくさんとりすぎれば、その働きが身体の害になることはありますが、適度にとればよい働きをするのがカフェインです。
カフェインは、コーヒーや緑茶などに多く含まれます。
近年の研究によって、コーヒーはアルツハイマー病やパーキンソン病の予防に効果があることがわかってきました。
その作用は、コーヒーに含まれるコーヒー酸とクロロゲン酸の抗酸化作用にあります。
これらもポリフェノールの仲間であり、フィトケミカルの一種。
活性酸素の害を消すことができます。
実際、コーヒーなどを多くとる人は、とらない人に比べて、パーキンソン病の発症率が40~50パーセントも低いというデータもあります。
いっぽう、緑茶はどうでしょうか。
緑茶にもカテキンなどのフィトケミカルが豊富です。
緑茶の渋みや色の成分です。
東北大学の栗山進一(くりやましんいち)教授らの研究によれば、緑茶を一日5杯以上飲むグループは1杯未満のグループに比べて、男性で12パーセント、女性で23パーセントの割合で、全死因の死亡のリスクが低くなっていました。
疾病ごとに見ると、循環器疾患でより強い関連が見られ、男性で22パーセント、女性で31パーセントも低下しました。
循環器疾患とは、心臓や血管などが正常に働かなくなる疾患。
高血圧、心疾患、脳血管疾患、動脈瘤などです。
こうした病気を防ぐことは、認知症の予防にも重要です。
以上をまとめると、コーヒーや緑茶をある程度飲むことは、認知症の予防にも期待できると考えてよいでしょう。
では、どのくらいがよいのでしょうか。
カフェインの摂取量を考えれば、コーヒーや緑茶をあわせて、一日に4~5杯程度がよいのではないかと思います。
なお、コーヒーや緑茶が認知症の予防によいのは、カフェインのリラックス効果にもあります。
カフェインには、脳を覚醒させる働きがある一方で、強いリラックス効果があることもわかっています。
人はストレスを感じると、血管を収縮させます。
こうなると、血流が悪くなります。
その状態が長く続くと、脳へ届けられる血流量も減ってしまいます。
そんなときに、コーヒーや緑茶などカフェインを含むものを飲むと、気持ちがホッとしてリラックスします。
リラックスすると、血管がゆるんで血流がよくなります。
すると、脳へと送られる血液も増やすことができるのです。
また、人とおしゃべりしながらお茶をするのも、よいこと。
楽しい会話が、脳によい刺激を与えてくれます。
一日10分でもよいので、好きなものを好きな人とおしゃべりをしながら飲む。
そんなひとときを持つ習慣のある親は、ボケにくいのです。
【まとめ読み】『親をボケさせないために、今できる方法』記事リスト
高齢の親の認知症を予防する「具体的な59の方法」が、4章にわたって解説されています