大切なのは「平均点」だといくら増えるか。プロが教える「投資と競馬の違い」

老後資金のために「投資」を考えているけど、ちょっと怖い...そんな人にまず知ってほしいのが「金融のイロハ」です。そこで、資産運用のプロ・山崎元さんに、金融知識が全くない大橋弘祐さんが質問する形式で分かりやすいと好評の著書『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(文響社)から、投資の初心者が知っておきたい「投資と貯蓄の疑問」をお届けします。

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頭のいい人たちは、なぜ投資をするの?

――ちょっと疑問なんですけど、どの金融商品が上がるか下がるかは誰にもわからないってことですよね。そのことは、もちろん世の中の投資している頭のいい人たちは、当然わかってるわけですよね。なのに、なぜ投資するんですか

なかなか深い質問だね。――なぜ、投資するか。これに端的に答えるなら、たぶん増えるから

――(たぶん増えるからって......)

よく、リスクって言葉使うでしょう。リスクって何だかわかる?

――ハイリスク、ハイリターンとか言うやつですよね......。リスクっていうのは『減るかもしれない』ってことですか

それだと半分正解で半分間違い。リスクというのは『減るかもしれないし、増えるかもしれない』ってこと

――増えるほうもリスクなんですね

そう。で、もし君が100万円を預けるなら、『確実に100万円のままにしておきます』という安定しているA銀行と、『200万円になるかもしれませんが、0円になるかもしれません』という不安定なB銀行だったらどっちを選ぶ?

――Aに決まってるじゃないですか

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ということは、B銀行のような『増えるかもしれないけど、減るかもしれない』リスクのある金融商品(投資信託とか株とか)は、普通にしてたらお金が集まらないよね。だから、リスクをとった人には報酬が上乗せされるの。これがリスクプレミアム(上図14)だから君の質問の『なぜ投資するか』に答えるなら『リスクをとることによって増えるかもしれないから』と言える

――でも、さっき先生がやってはいけないって教えてくれた外貨預金だって増えるかもしれないじゃないですか。もっと言ったら、競馬や宝くじだって増えるかもしれないじゃないですか。どうして先生の教えてくれた投資信託がいいんですか

例えば君がトヨタの株を買ったとする。トヨタは自動車メーカーとして、株価を上げたり配当をしたりして、株主に利益を還元しようとしているわけ。つまり、トヨタの従業員や工場、店舗、その他もろもろが君の資産を増やそうとしている。勝つか負けるかの外貨預金や競馬とは違うよね。実際、トヨタの株は、浮き沈みはあるけど20年で4倍くらいになっている

――はあ......

それで、トヨタの株だけに投資すると、トヨタが業績不振になったとき影響をうけやすい。でも、さっき教えた投資信託なら少ない資金で世界中の会社の株を少しずつ買うから((1)が約1800社、(2)が約1400社)、ものすごく広く薄く分散投資ができてリスクを下げられる。さっきの卵とカゴの例で言えば、カゴが数千個あるイメージだね。そうすると、平均的には、金利よりもプラス何パーセントか、思い切って言うと5%くらいの運用ができると考えてもいい。もちろん正確な数字はわからないんだけど

――でも、金融危機や戦争があれば、世界経済は減退するんですよね。そしたら、カゴが全部ひっくり返って損するんじゃないんですか

たしかに、リーマンショックのときは半年くらいで日経平均が42%くらい下がった。でも、そのあとは持ち直した。そういうのを入れても、平均すると金利プラス5%くらいなの。つまり100万円が1年で平均105万になるギャンブルだと考えるといい。だったら、増えないところにおいておくより、そっちをやってみようよ。というのが考え方(下図15)

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――その平均プラス5%というのは、何が根拠なんですか

これは、年金なんかを運用している機関投資家と呼ばれる連中がいるんだけど、彼らは株式について、だいたい金利プラス5%くらいの計画をたてて毎年運用している。株式のリスクプレミアムはこれくらいで考えておくのは、別に特別なことではなく世間並みだと思う

――なるほど......

これは、宝くじや競馬と比べてみるとわかりやすい。競馬は胴元である運営者側が、集めたお金からだいたい25%くらい引いて、残りの75%を、馬券を買ったお客さん同士で取り合う。だから仮にずっと1万円の馬券を買い続けたとしたら、平均的な払い戻し金は、だいたい7500円になってしまう(マイナス25%だから)

宝くじは法律で還元率が50%を超えてはならないと定められていて、実際の還元率は約45%くらい。つまり、宝くじを1万円分ずっと買い続けたら、平均で4500円くらいになる

――そんなに低いんですか?

うん。ちなみに還元率45%っていうのは驚異的に低くて、世界トップレベルのボッタクリギャンブル。だから、経済的な観点から言うと絶対買わないほうがいい。ちなみに宝くじで損する分は『無知の税金』って言われている。正しい知識があれば、失うことのないお金だからね

――ひどいですね......

君がほどほどのリスクでお金を増やしたい派なら、平均点をとれば105万になる『投資』を選ぶべきだし、この平均に限りなく近づける投資方法をするのがいい。100点を取れって言ってるんじゃないんだもん。平均点でいいんだから期待できるでしょう

日本では投資をしている人がまだ少ないそうです。
それは、この考え方が理解されてないのが原因だと思いました。
投資というとどうしても、世の中の情勢をくまなく知って、それで株が上がるか、下がるか予想して、上がったら大儲け、負けたらすっからかんみたいなイメージがありますが、そうじゃないコツコツ型の運用があり、欧米ではそれが一般的なのだそうです。

で、ここで言うコツコツ型の運用というのは、100万円がたぶん105万円になる。減るかもしれないし、もっと増えるかもしれない。でも長い目でみたら、おそらく平均105万。
というやり方があって、これを簡単に実現する金融商品も出ていて、素人でも難しいことではない。ということなのです。

――ちなみに、先生は当然ギャンブルやらないんですよね

やるよ。競馬を

――えーっ!話違うじゃないですか。ギャンブルじゃなくて投資をやるべきなんじゃないんですか

そうだよ

――(あっ、また開き直った......)じゃあ、なんでやるんですか?

さっきの話だと、胴元が25%とるから1万円を使ったら7500円になるって言ったじゃないですか

――2500円で熱狂できるからね。私はその精神的効用を買ってるの。くだらない映画を観るよりは全然いい。投資じゃなくて『教養娯楽費』だね

(教養娯楽費......)

――あと、競馬は勉強になる。なぜなら、競馬は勝敗を決める要素がたくさんある。不確定要素が多い中でゲームプランを立ててギャンブルに臨むのは楽しいし勉強にもなる。それに、どんなに勝ちたくても、どんなに考え抜いても、間違っていることはあるから、勝負の世界に絶対はない。人生も同じだね。それを学ぶには競馬が一番いい。子供にもギャンブルを教えようと思ってるよ

――(なんか、それって言い訳のような......)

とにかく、借金をしてギャンブルにつぎ込むのは問題外だけど、節度をもってやる分には、いい娯楽。ちなみにあるニュースサイトで競馬の予想の連載をやってるから、それもしっかり書いといて

――(あっ、さりげなく宣伝までされた......)


[まとめ]

・正しく分散投資をして平均で金利プラス5%を目標に運用する。
・競馬や宝くじは胴元の取り分だけ損をするから経済学的にはやらないほうがいい。
・ただし、競馬は損が問題ない範囲でやるなら意思決定の練習や精神的鍛錬になるらしい......(本当か!?)


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035-okane.jpg5章にわたって国債や投資信託、NISAに年金に至るまで、資産運用の基本のキを解説。実際にネット証券の口座開設法も写真で紹介されて分かりやすい

 

山崎元(やまざき・はじめ)
1958年、北海道生まれ。経済評論家。専門は資産運用。楽天証券経済研究所客員研究員。東京大学経済学部卒業、三菱商事に入社。野村投信、住友信託、メリルリンチ証券など12回の転職を経て現職。著書に『学校では教えてくれないお金の授業』(PHP研究所)など多数。

大橋弘祐(おおはし・こうすけ)
作家、編集者。立教大学理学部卒後、大手通信会社の広報、マーケティング職を経て、作家に転身。著書に『SURVIVAL WEDDING』(文響社)など。

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『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』

(山崎元・大橋弘祐/文響社)

「投資」って興味はあるけど、どうやったらいいのか分からない。そんな「お金のド素人」代表が、東大卒で外資系証券や保険など金融12社を渡り歩いた「お金のプロ」に、なるべく安全なお金の増やし方を聞いた、初心者向け投資解説本。プロと素人の会話形式でまとめられているので、金融知識ゼロから投資を始めたい人にうってつけです。

※この記事は『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(山崎元・大橋弘祐/文響社)からの抜粋です。
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