仕事で転勤や異動、自分や家族が病気を患うなど、人生の転機を迎える可能性が高い中年期。急な報せに焦るかもしれませんが、うまく乗り越えれば残りの人生を有意義に過ごすチャンスにもなります。そこで、『自分らしく生きる! 40代からはじめるキャリアのつくり方:「人生の転機」を乗り越えるために』(石川邦子/方丈社)から、女性が抱えるライフキャリアの悩みとその解決方法について、連載形式でお届けします。
ロールモデルはパーツを集めて
女性がライフキャリアを考えるときに、ロールモデルが必要だといわれます。
女性活躍推進に関わる中でも、ロールモデルがいないために、女性のキャリア開発が進まない、ともお聴きします。
しかし、ロールモデルというものに幻想を抱き過ぎていないでしょうか。
ひとりで理想的な女性のモデルになるのは至難の業だと思います。
そんな完璧な人間はいないのです。
モデルをひとりに絞るのではなく、複数の、それも性別関係なく、社内外問わず、モデルにしたいパーツ(考え方や行動)を集めて、自分なりのロールモデルをつくってもいいのではないかと思います。
たとえば、「仕事の仕方はAさん」、「周囲への気遣いはBさん」、「プレゼンでの押しの強さはCさん」という風に、考えていくと面白いと思います。
文字通り役割ごとにモデルを設定していくのです。
ロールモデルは成長していく過程で、具体的な行動や考え方の模範にしていく存在ですから、ひとりに絞る必要はありません。
ロールモデルが整理できたら、現在の自分とのギャップから目標設定につなげていくこともできます。
もし、モデルとなる人がまったくいないと言うなら、あえて反面教師から学ぶこともできます。
具体的な行動や考え方について目標を定めるのであれば、それも可能なのです。
自分を認めてもらいたいと思う存在を持つ
ロールモデルとは少し違うかもしれませんが、「この人に認められたい」と思う存在がいることは貴重です。
キャリアを築いていくためには人脈を拡げていくことが大事ですが、それは、外的なつながりのためだけではなく内的な心の充足のためでもあります。
私には、顔と名前を覚えてもらえないけど、いつか覚えてもらいたい、認めてもらいたいと願う女性がふたりいました。
宮城まり子先生と渋谷武子先生です。
おふたりとも物腰は柔らかいのに、鋭く本質を突いたお話しやコメントをなさる方です。
こうした外的なものにも惹かれましたが、その外的な所作の内側にある、人や仕事、人生そのものに対する姿勢や価値観に、女性としてカウンセラーとして、「このようになりたい」と、影響を受けたのです。
おふたりともカウンセリングや心理学の世界ではとても人気のある方々で、「追っかけ」もいるくらいです。
お忙しい日々の中で多くの人と接していらっしゃるため、私も最初は顔も名前も覚えてもらえませんでした。
しかし、学会の運営のお手伝いや講座のお手伝いに出向き、徐々に顔を覚えてもらえるようになりました。
真摯に自分の役割に向き合ったことで、遠い存在だった先生たちと一緒に講座を企画したり、運営したりできるようになりました。
憧れの人との接点が生まれたことで、私という存在が認められたように感じましたし、自分の成長を実感することもできました。
何より、心の距離が近くなったことがうれしく、充足感がありました。
これは、自己肯定感を高め、自律的にキャリアを描くために必要な要素になるでしょう。
どんなに遠い存在の人であっても、あなたが憧れているということは、あなたの中に憧れの人と同じ何かがあるということです。
そこを磨いていきましょう。憧れの人に認めてもらえる自分、いつかお会いしたときにしっかりお話できる自分を思い描いてみてはいかがでしょうか。
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