<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:娘と息子の2人の子どもをもつ地方公務員の60歳男性です。子どもらが中学生の時はPTAにも力を注ぎました、が...。
今から13年前、息子が中1、娘が中3の時に中学校の役員を務めていました。
2人ともお世話になるのはこの年だけだったこと、当時は役場の教育委員会に勤めていたので、学校の取り組みに興味があったことなどから引き受けた仕事でした。
そしていざなってみると、いろいろ気になっていることをなんとかしたいと思うようになりました。
一番気になっていたのは、夏休みに行われていた廃品回収です。
生徒たちとPTAが協力して地区の家々を回って廃品を集め、それを売却して部活動の活動資金などにするというものです。
聞いた話では、始めた当初は廃品の価格が高騰していてそれなりの収益になったようですが、今では炎天下で一日作業をしても大した収益にはならず、まさに労多くして益少なしの行事でした。
収益もほとんどは運動部の修繕費として消えるので不公平だという声があれば、各家庭からPTA会費を取っているのだから部活動に必要な経費はそこから支出するべきだという人もいました。
多少の会費が上がってもこんな大変な作業をするよりはましだという人もいて、娘の入学以来、話をしたほとんどの人が反対意見でした。
「いろいろ意見もあるようですし、一度賛否を問うアンケートをして検討してみては?」
春先の役員会で提案したところ、やってみてもいいのではないかと了承を受け、言い出しっぺの私が担当になってアンケートを行うことになりました。
早速アンケートを取り、その集計をしていたところで、教委の先輩であるAさん(当時50代)が声をかけてきました。
「ウジさん、廃品回収の件なんだけどさ...」
Aさんは、すでにお子さんが卒業したOBでしたが、元会長も務められていた方です。
「アンケートしてるって聞いたんだけど...」
「よくご存知ですね。ええ、僕が集計していて、やっぱり反対が多くあるので...」
「...それさあ、なかったことにできないかなあ...」
「はあ?」
Aさんによると、この廃品回収を始めたときの会長さんは、今は町の議員さんになっており、自らの手柄話としてこの行事をあちこちで自慢しているらしいのです。
そうした事情を忖度して、歴代会長さんの間では「この行事だけは」と申し送られてきたとのこと。
後から聞いたところによると、今の会長さんもこのことは知っていたのですが、場の雰囲気で言い出せなかったようです。
「件の議員さんにご注進した人までいたらしくてね、歴代会長さんや議員仲間などの間では、余計なことをする、とか、本来の趣旨を忘れてる、とか、不満を口にする人も多くてさあ...」
なんとか大事にならぬよう穏便に済ませたいということで、Aさんに白羽の矢が立ち、私を説得にかかったわけでした。
聞く人みんなが不満だらけの行事なのに、継続されているのはいわば「教育委員会の七不思議」でしたが、そういう忖度重視の学校文化のなせる技だったのか、とひどく幻滅しました。
さすがにアンケート結果はごまかせないので、事実のまま集計して役員会に報告しました。
ただ、役員会でもこうした話は行き渡っていたようで、話し合いは「どうやって続けるか」という方向に終始しました。
「アンケート結果では貴重なご意見を多く賜り、改善の必要があることは現下の課題として捉えます。こうした改善意見を踏まえつつ、部活動資金の充実を目指す趣旨に鑑み、廃品回収は今後も継続することといたします」
苦渋の決断と必死の作文が報告されたのは、それからまもなくのPTA会報上でのことでした。
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