<この体験記を書いた人>
ペンネーム:mamapanda
性別:女
年齢:46
プロフィール:85歳になった父とどう楽しく、安全に、長く一緒に過ごせるかを毎日模索している主婦です。
父(85歳)は運転免許証返納後、電動自転車に乗り始め、健康のためにと毎日のように近所の河原にサイクリングに出かけます。本人もとても気分が良いようで、今日はあの橋まで行ってきたんだ、と自慢げに話してくれます。ただ、電動は少し踏むだけでもかなりのスピードが出るのですが、それが父には気持ちが良いようでどんどんスピードを上げてしまうのです。たまたますれ違ったご近所の方からも、85歳の自転車とは思えない程のスピードだったと言われてしまいました。
転倒や衝突など、事故になったら大変です。これは止めなくてはと思い「危ないでしょ」と言ってみたものの、「スピード出さないと運動にならん」とのこと。「昔よりも反射神経は鈍っているんだから」と言うと、「俺を馬鹿にするな!」と年を取って余計に頑固になった父は怒鳴り返してきます。
自分の転倒ならまだしも、他の人に怪我でもさせたら...とこっちはヒヤヒヤものです。もちろん保険には入っていますが、それは根本的な解決にはなりません。そして軽車両と言ってもさすがに車両速度違反までは行かず、父の抑止には使えませんでした。
そんな中、先日、あまりにも毎日乗り過ぎたのか、電池の寿命なのか、電動が全く効かない状態になってしまいました。次の自転車を買うまでの間、私の電動ではないママチャリを乗るのかと思いきや、電気が作動しなくても、自分の壊れた自転車に乗って父は出かけていました。もう父にとっては電気が効かず重いとかの問題では無いようです。思えば、いつも「この自転車良いんだよな。電動だからスーッと走って、俺もどこまでも行けるんだよな。この自転車があって本当に良かった」と口癖のように言っていました。きっと父にとっては、腰を悪くして歩き辛くなった自分を色々な所に連れて行ってくれる宝物のようなものだったのかもしれません。
しばらくして、新しい電動自転車がやって来ました。まだ乗り慣れないせいか、前の自転車の方が良かったとボヤキながらも毎日乗っています。私達としても、また毎日気分良く出かけている父の姿を見るのは嬉しいものです。
それでもスピードの出し過ぎは絶対に困りますので、今では出かけるときに「心配しちゃうから、スピード出さないでね。行ってらっしゃい!」と元気よく声をかけて送り出すようにしました。子供相手のように注意すると父は余計反発して怒りますが、家族が心配するよ、と何度も言うと、「家族に心配を掛けてはいけない」という家長の威厳が父の心の中に蘇るのか、何となく心に留めてくれるようなのです。
実際街中で見かけた時も、以前よりはるかに安全運転をしていまmした。
願いを込めて言葉を掛けると、「はいはい、気を付けるよ」と笑顔で返してくれます。
父がいつまでも元気で出かけられるよう、願いを込めた呪文のように、優しく笑顔で毎日それを繰り返す日々です。
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