多発する高齢ドライバーの事故。75歳以上の運転免許保有者数は10年で2倍に/介護破産(36)

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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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多発する高齢ドライバーの事故

千葉県在住のヨシオさん(仮名、72歳)が、いつも通りマイカーで自宅近くの交差点に差しかかったときに、その〝事件は起きた。「気が動転してしまい、何をどうしたらいいのかわからなくなってしまいました―」

信号機のない交差点を右折する際にアクセルとブレーキを踏み間違えて、フェンスに激突した。幸いにも歩行者がいなかったうえ、ほかの車を巻き込まず、大惨事に至らなかったことに胸をなでおろしている。

車の修理代が10万円程度かかったが、何よりも事故を起こす直前、一時停止ラインの手前で止まっていた車の存在にまったく気がつかなかった自分に驚愕した。「今までこんなことは一度もなかった。もしかしたら、私も認知症がはじまったのではないかと思い、とても不安になりました」(ヨシオさん)

実はヨシオさんは地元で民生委員をしており、日頃から認知症の人の家族から運転にまつわる相談を受けていた。だからいっそう不安が膨らんだという。「家族はすぐに運転をやめさせたいと思っているが、本人に病気の自覚がなく、ハンドルを握り続けてしまう。当事者の立場になってはじめて危険だということがわかりました」(ヨシオさん)

75歳以上の運転免許保有者数は2016年6月末の時点で過去最多の495万3912人に達し、10年で2倍になっていることが警察庁のまとめでわかった。
これにともない75歳が過失の重い「第1当事者」となった事故の割合は、3.2%(2005年)から6.5%(2015年)に倍増。重大な事故も相次いで起きている。

高齢者事故の予防策として2017年3月から改正道路交通法が施行された。この改正により臨時の認知機能検査が導入され(図4 -1)、そこで「認知症の恐れあり」と判定された75歳以上の免許保有者全員に、医師の診断が義務づけられることになった。最終的に医師から「認知症」と診断されれば、免許停止か取り消しとなる。

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ところが、認知症などといった明確な症状だけが事故の原因ではない。高齢になると運動能力や判断力などが低下し、若い頃と同じように運転できなくなるのが一般的で、問題を複雑にさせている。
認知症についての悩みや相談は、市区町村が設置する既述の「地域包括支援センター」に寄せられることが多い。だが、車の運転に関しては「どう対処していいのかわからない」と明かすセンターの職員もいる。

厚生労働省は2013年から「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」を実施しているが、このなかには車の運転対策は盛り込まれず、省庁間の連携を目指した会議もはじまったばかり。縦割り行政の弊害で認知症ドライバーが〝野放し″の状態になっている。

  

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

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