祖父が建てた立派なお墓も、ゆくゆくは無縁墓地に...?墓じまいを検討した時のこと

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ペンネーム:みすず
性別:女
年齢:55
プロフィール:家が建つ位の費用を掛けて祖父が作ったお墓がありますが、遠方に引越し50年たった今、住んでいる土地に新しいお墓の購入を検討しています。

※ 毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。

私は、5歳の時に福岡県飯塚市から、40kmほど離れた福岡県久留米市に越してきました。それから50年久留米に住んでいますが、最近1つ悩みがあります。それは、飯塚にあるお墓を墓じまいして、今住んでいる久留米に新たにお墓を購入しようかということです。

今のお墓は、寺管理のない墓地に他のお墓と独立して建てた、石垣造りの3畳ほどの広さのもの。亡き祖父が生前、当時家が建つ位のお金を掛けて建てたお墓だそうです。同じ敷地内に、我が家のお墓と、戦死した叔父のお墓があります。さらにお墓の御影石に彫られてる文字は、祖父の自筆のものだそうです。そんな祖父の思いが込められたお墓なので、私もまわりも、今後先祖代々引き継がれていくものだと思っていました。

しかし、そんな思いを揺るがす出来事がありました。現在87歳の母が去年の5月から今年の4月まで長期入院をしていたのですが、退院して久しぶりにお墓に連れて行った時のこと。お墓に行くにはまず車を止め、そこからカーブしている細い道を200m位登って行かなければなりません。さらに、お墓の敷地までは5段の階段をのぼります。入院前の母には何の問題もなかったことでしたが、足腰が弱り、車からお墓まで歩くことがとても困難になっていたのです。

母は、先祖を心から大切にする人なので、お墓参りができないのはとてもとても辛いことのよう。さらに自宅からお墓までは車で1時間以上掛かるし、私も車の運転をいつまで出来るか分かりません。そこで、近い所にお墓があれば、頻繁にお墓参りもできるし、車の運転ができなくなってもタクシーでも行ける。車から降りてそれ程歩かなくて済むような所を選べばいいのではと思い、今住んでいる久留米市内にお墓を購入しようか考えたのです。

私には7歳上の兄と4歳上の姉がいますが、姉は嫁いでいるし、兄は愛知県に永住する予定で、こちらに帰って来ることもないようです。私は、母の面倒をみている立場上、お墓を引き継ぐという使命感みたいなものがあるのですが、独身で子供もいなません。さらに、長男である兄にも娘が一人いるだけ。未来に向けて考えた時、誰もお墓を引き継いでくれる人はいないということになります。このままでは無縁墓地になる可能性も大きい。この問題は、私が元気な今のうちにきちんとしておく事が大切だと、10年前位から考えていました。

そこで、これを機に前向きにお墓購入を検討しようと思いました。まず、納骨堂とお墓ではどちらがいいのか、どの位の費用が掛かるのか。今のお寺に相談しようと考えていたある日、新聞チラシの中に霊園の広告が目に入りました。早速、取り扱いの企業に連絡をとり、まずは見学をすることに。そこは、自宅から車で20分の、少し山手に存在する霊園。車から降りると、広々とした敷地にお墓が沢山並んでいました。周りは、山が目の前に見え緑豊かな環境で、それを目にした時、一気に納骨堂の案が頭の中から消え去りました。その場所は、とても気持ちがいいところでした。お墓参りは参る人が気持ちよく参る事が一番大切なのではないかと思いました。

環境の良いことに加え、この霊園は、今の私の条件にぴったり合っていました。まず、自宅から近いこと、車から降りてすぐにお墓参りができるので、足腰の弱った母も気持ち良くお参りができること。そして、何と言ってもお墓のお世話をする人が誰もいなくなっても、一生に渡り管理してくれる人がいることです。さらに今の墓の祖父の自筆の字をコピーして、新しい墓石に彫る事も可能とのことでした。

問題点は一つもないと言っても過言ではない位気に入った私は、さっそく見積もりを頼みました。結果は、新しいお墓の価格が約150万円と今のお墓の墓じまいにかかる費用が約90万円、合計約240万円でした。やはり安い買い物ではありません。すぐに購入しなければならないものでもありませんし、契約をした後に後悔しても遅いことです。兄や姉に相談しなければならないことでもあります。次回兄が帰省した時に、真剣に話し合って決めたいと思っています。

 

【お墓に関するプロのアドバイス

第一生命経済研究所主席研究員の小谷みどりさんに、墓のこと、墓じまいのことを聞きました。

「墓は大事に守らなければいけないと教わってきた60代、70代の人たちの中には、体力、子どものこと、そして金銭的な問題で墓参りに行くことができない人が増えています。そして、自分の代で墓を片付けなければいけないことに負担を感じています」と小谷さん。

もちろん、墓を持たない選択肢もあり、その場合は永代供養墓、共同墓などを利用することになります。最近は、老人ホームが施設近くの霊園などに共同墓を持つケースが増えているそうです。

 

◆墓を建てない・持たない例

永代供養墓
承継を前提としない寺の墓で、「永代供養塔」などとも呼ばれています。一定期間を過ぎると合葬され、寺院が半永久的に供養してくれます。

共同墓(納骨堂)
承継を前提としない、公営墓地や民間霊園の墓で、樹木葬なども含まれます。室内にある設備の場合、最近はカードキー式で、墓が自動的に目の前に出てくるタイプもあります。

手元供養
自宅に骨壺を安置しておく方法で、「自宅供養」とも呼びます。骨壺の安置場所としては仏壇が多いですが、基本的に家の中のどの場所に安置しても大丈夫です。

散骨
粉末状にした遺骨を山や海などにまくのが散骨です。ただ、自治体によっては規制または禁止されている地域もあるので注意が必要です。

 

墓を継ぐ人がいないと、無縁墓として撤去される場合があります
墓を承継できなかったり、承継しても霊園などに支払う年間の管理料を数年間納めずに放っておくと、無縁墓と認定され、墓地や霊園によっては撤去されることがあります。撤去されなかったとしても、無縁墓として放置されます。子どもがいなくて墓参りができなくても、管理料さえ納めていれば無縁墓にはなりません。中には、買ったのに無縁墓になるのはおかしいと怒る人がいますが、その土地を購入したわけではありません。土地は霊園や寺の所有物で、霊園などから借りているに過ぎません。この借りるための料金が、霊園などに支払った永代使用料です。

 

「墓じまい」とは墓を片付けること、「改葬」は墓の引っ越しです
墓を片付ければ(墓じまい)、その後引っ越し(改葬)する必要がありますし、墓を改葬するには、事前に墓じまいをしておく必要があるので、基本的には同じことです。例えば、地方に住む親が亡くなり、地元に墓はあっても墓参りが大変なので、子どもが住んでいる地域に墓を改葬する例などが考えられます。例えとして、名古屋から東京郊外の民間霊園へ改葬したとすると、墓の撤去費用や改葬先の墓の建立費(永代使用料込み)なども含めて二百数十万円かかります。いずれにしても、後々トラブルとなることを防ぐためにも、家族や親族などと話し合いを持つことが必要です。

健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
記事に使用している画像はイメージです。
 

<教えてくれた人>

小谷 みどり(こたに・みどり)先生

第一生命経済研究所主席研究員。博士(人間科学)。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。著書に『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓』(岩波新書)他がある。

小谷みどりさんからのアドバイスは『毎日が発見』2018年8月号に掲載の情報です。

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