<この体験記を書いた人>
ペンネーム:oroca
性別:女
年齢:41
プロフィール:地方公共団体に10年以上勤務した経験を持つ一児の母。現在はフリーランス。
今から15年ほど前、大学卒業後に地元の地方公共団体で働いていたときの話です。
企画関係の部署に配属された私は、地域の方々と話し合いながら、様々な仕事に積極的に取り組んでいました。そんなある日、上司に呼び出されて、個室で二人きりになりこう言われました。
「女子職員は男性職員の女房役である。机拭きとお茶くみだけできていればそれだけでいい。結婚してとっとと辞めてくれ」
確かに、当時の私は社会人として未熟で、その上司から見たら、いなくなって欲しい面倒な部下だったのでしょう。それにしてもまさか、男女共同参画社会を推進している時世に、そのような男尊女卑な言葉をわざわざかけられ、人事権もない人に辞めろと言われるとは思わず、驚いてしまいました。
直属の上司からそのように言われたので、仕事熱は封印し、朝夕机を拭いて、灰皿を洗い、朝、10時、12時、13時、15時、来客時にお茶をいれることに専念し、決まった作業以外はせず、一日のほとんどを給湯室で過ごすようにしたら、その上司も感じよく接してくれるようになりました。
その職場は男性の方が人数的にはるかに多く、同世代の大卒の女性職員がいなかったので、その人からすれば私のような生意気な小娘が気に入らなかったんだと思います。継続することに意義がある業務が多い中で、企画関係の部署だからといって本当に新しい企画をしていたのが気に入らなかったのかもしれません。そのような仕事よりも、周りの男性職員への心配りや職場環境を保つことに力を注いで欲しかったのでしょう。そういう点では確かに、私には他の方への気配りや人間味が欠けていたかもしれないと反省する部分もあります。
しかし、素直に反省できずに不愉快に感じたのは、私がその上司を尊敬していなかったからです。その上司が女性を卑下していて、長いものには巻かれる人だということに対し、私は日頃から不快感をおぼえていました。そして、その上司がヘラヘラしながらいつも後を追いかけていた首長が、私のことをいつも褒めていたのが気に入らなかったのではないかと思ってしまいました。また、私が上司の人間性を軽蔑している気持ちが知らず知らずのうちに伝わってしまったのかもしれません。
そのときにはすぐに辞めませんでしたが、それから数年後、その職場を辞めました。そういうことを上司に言われてしまったというショックが拭えず、何をしても「女」として見られている気がして、自分が学んできたことを活かせない職場にいるのが苦痛だったのです。
それからはのびのびと自分らしく、周囲の人々と尊重し合いながら生きることができています。「とっとと辞めてくれ」と言われましたが、本当に、辞めて良かったです。ある意味、その上司に感謝です。
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