<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:どんな職場にもなぜそうなってるかわからない不合理な仕事の進め方があるのでは? でもきっと何か理由があるのです。
私が町の教育委員会に異動になった年の出来事ですから、20年ほど前の話になります。
どこの市町村でもそうだと思いますが、地域の小中学校の体育館などの施設開放で、成年教室やスポーツクラブなどの生涯学習団体に貸し出すシステムが、我が町にもあります。
私はこの割り振りの担当になりました。
前任者から引き継いだフローは次のとおりでした。
まず、教育委員会内の生涯学習課が各団体の希望を取りまとめます。
次にその希望について各学校に打診します。
すると、学校から行事等でどうしても都合がつかない日を指定されます。
その結果を私がまとめて生涯学習課に伝え、生涯学習課は各団体に改めて使用できない日を伝え、予定変更をお願いする、という流れです。
「んー、やっぱりこれって、二度手間だよなあ...」
引き継がれたときには黙って聞いていたのですが、いざ1年間担当をやってみると、いかに面倒な作業かが分かります。
生涯学習課からもらった希望日を各学校に伝え、その返事を生涯学習課へ伝える行ったり来たりの煩わしさは想像以上でした。
学校から断られる日は、大体が卒業式などの行事がある日とその前後です。
学校では年間の行事予定を前年度末までには決めているので、これはあらかじめ分かるはずです。
つまり打診する前から、だめな日は分かっていることになります。
「学校に使用できない日を決めてもらって、それを知らせておけば、各団体はそれを避けるだろうし、生涯学習課だっていちいち断りを入れなくて済むじゃないか...」
移動前の部署では手間を省く合理化は公務員としての務めだと指導され続けていました。
ここでもその教えを守って、業務の合理化をしようと考えたのです。
そこで、各学校が来年度の予定を出す時期に、私は各小中学校の管理職の先生に行事等が入っていて使えない日や期間をあらかじめ教えてもらいました。
そして、それを一覧表にまとめて、使用予定のある登録団体に送って周知を図りました。
「これでみんな余計な手間をかけずに済むぞ」
このときの私は達成感で満ち溢れていました。
数日も経たずに、私は生涯学習課の課長(当時50代)に呼び出されました。
お褒めの言葉でもいただけるかと出向いたら、いきなり怒鳴りつけられました。
「なんてことをしてくれた! 苦情が絶えんぞ!」
何のことやら分からずにしどろもどろしていると、たたみかけるようにまくし立てられました。
「予定の一覧など、なんで作ったんだ! 今までより使用可能な期間がぐんと減ったと使用団体から不満の嵐だ! 月ごとに、ここで使いたいんですが、と申し出るから学校も無理して譲ってくれる部分もあるんだぞ!」
「初めからお伺いを立てたら面倒にならないようにと余裕を見て、長目の期間にわたって使用できません、と言ってくるに決まってるだろうが!」
結局、私が出した一覧は「あくまでも参考のため」とただし書きがつき、必要であれば構わずに、今までどおり使用希望を出してください、と後追いの通知を出す羽目になりました。
これこそ二度手間です。
その上、学校からはあらかじめ予定を出したのに結局無理しなきゃならないんだ、と嫌味を言われ、各方面から踏んだり蹴ったりの1年を過ごしました。
関係者全員の手間を省いてあげようとしたら、「麗しき慣習」を破ることになってしまったわけです。
この一件以来、何かしら不可解なしきたりのようなルールがあるときは、その意味をよく調べてみるようになりました。
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