【60歳を過ぎれば...】「お客さまはシニア料金」うれしいのか切ないのか...アラ還の独り言

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:2021年12月、私も還暦となりました。60歳と言っても、若い頃に思っていたよりは全然若い気がします。

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「いやあ、思ったより伸びてたなあ、年明け前に切っとけばよかった」

独り言を言いながらいつもの理髪店に向かったのは、2022年1月のことです。

カットのみの激安系の理髪店を馴染みにしており、その日もいつもどおり短くさっぱりと切ってもらうつもりでした。

「さて、カット券を買わなきゃ...ん?」

カット料金は前払い、自販機で購入します。

単一料金が売りなので、悩むことなくボタンを押せばいいのですが、この日はいつもは気にしなかったもう一つのボタンに目が行きました。

そのボタンに記されているのは「60歳以上シニア料金」の文字。

そうです、これからは100円引きになるのです。

「年末に来てたら通常料金のままだったな、これはお得だ」

もちろんカットはいつもどおり、安い分、切り方が雑というわけではありません。

12月生まれなので、年明けを祝うかのように、いろいろとお声がかかりました。

毎月細々と年金積立をしていた銀行からは、電話がかかってきました。

「満期ですが、受け取り開始なさいますか?」

いやいや、まだ働いてますから。

塵も積もれば、で結構な金額になっていたので、さしあたって運用に回すことにしました。

行きつけのドラッグストアがあり、その店のスマホアプリを入れています。

アプリにお知らせマークが付いたので開いてみると、「シニア会員登録のお知らせ」のニュースが届いていました。

シニア会員、なんかいいことあるのか、と読んでいくと「成人用おむつが特別価格に」という一文が。

デリカシーのなさに憤慨しましたが、ちゃっかりと登録は怠りません。

休日には映画に行きました。

夫婦で同じ映画を見ると夫婦割になるのですが、この日は見たい映画が合わず、別々に見ることにしました。

チケット売り場に行き、まず妻(57歳)の分のチケットを購入。

続けて自分の分を買おうとしたところ、妻が販売機の画面を指差しました。

「ねえ、シニア料金なんじゃないの? あなたは」

なるほど、たしかに料金表示の中に「60歳以上」の文字があります。

「ああ、羨ましい、特別扱いよね」

そう言われてしまいましたが、通常料金よりはかなりお安い料金のそのボタンを押すのは悪い気分ではありませんでした。

なんだかんだと、いろいろサービスされるのは悪くない気分です。

しかし、そのサービスの理由を考えると、要するに敬老精神ってやつだよな、と思いあたってしまい、まだまだ若いやつには負けん、とそれこそ年寄りじみた思いが湧き上がってきてしまいます。

60歳が節目となるのは分かりやすいと思いますし、その意味ではもう若くはないのだとは思います。

しかし誕生日を境にして、壮年から老年へと一気に老け込むというわけではありません。

「まだまだお若いつもりでしょうが、そろそろいいお年なんですよ」

なんて無理くり老境に追い込まれているような気がしてしまいます。

喜んでばかりもいられない、と感じる日々が続きそうです。

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