<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ころちゃん
性別:男
年齢:54
プロフィール:年齢を重ねるにつれ、経済面だけでなく健康面も不安になる今日この頃です。
現在54歳の私が40歳の頃、1カ月少し入院したときの話です。
潰瘍で入院しましたが、薬のアナフィラキシーもあり、同室の患者さんの中では長居している方でした。
その間、入院患者は次々と入れ替わり、高齢者が多いとはいえ若者や子どもがいたこともありました。
こんな場では年長者に模範的な振る舞いを期待したいところですが、とんでもない人がいました。
私の状態はひどく、点滴をして起き上がることもできず、身の回りの世話を全て看護師に頼っていました。
テレビを見る気力もなく、カーテンで仕切られたスペースの中、窓の外の様子と耳から入る音だけが外界とのつながりでした。
聞こえてくる会話から分かるのですが、50代の腸閉塞の男性が入院してきました。
病状を聞くとこちらまで気が重くなり同情しましたが、たびたび訪れる同年代の奥さんや40代と思しき担当医との会話の様子は、尊大で荒っぽい感じでした。
彼の担当医が来たときの会話はこの通りです。
「いつ退院できるんや?」
「まだ今は...」
「連休は予定が入っとるんや」
「しかし」
「お前責任とれるんか!」
絡んでくる彼に対して、医師は必死で病状を説明します。
大腸が詰まった状態なので、点滴を外して退院するのは無理です。
誰でも理解できる内容です。
それでも男は食い下がります。
「退院せなあかんのや! ええやろ!」
「いや...」
「ええな!」
「は、はい」
私は「え? だめだろ?」と心の中で突っ込みましたが、長引く恫喝の中、医師は折れたようで退院処理の話になりました。
腸が詰まった状態でどうするんだろう、私は呆れました。
やがて奥さんが来ると、男は退院になったと上機嫌で語り、夫婦で喜び合っていました。
しかし、病室を出た奥さんは血相を変えて駆け戻ってきました。
「あんた! 何が退院よ! 婦長さんから聞いたわよ! あんた、また先生を脅したんやろ!」
「いや、俺はただ...」
「腸が詰まってるのにどうするつもりなん? ここでは点滴があるけど、家で飲まず食わずでどうやって生きていくつもりなん? あんたのせいで、明日10時には出て行かなあかんって言われたで! 明日からどないするん? ほんまにあほや!」
奥さんの剣幕に、男性はやっと事の重大性を認識し始めたようです。
奥さんは頭を抱え、男性は先程の勢いとは裏腹に「どうしよう」と哀れな声を出しています。
やがて50代くらいの婦長が来て事情聴取が始まりました。
言い訳していた男性も医師を恫喝したことを認め、どうか病院においてくださいと懇願しました。
それに対して婦長は、感情論ではなく、入退院には担当医の許可と必要書類への印が必要だと言います。
悪いことに、担当医は男性の退院処理を済ませた後、すでにシフトを終えて病院を出たとのこと。
このままでは男性は本当に翌日には退院しなくてはいけません。
婦長は、医師に連絡すると言って出ていきましたがつかまらないようで、男はただ情けない声を出すのみでした。
病室に漂う妙な雰囲気の中、面会時間を過ぎても奥さんは行き来し、必死な様子が伝わりました。
消灯する頃にやっと医師に連絡がついたようで、深夜にもかかわらず再入院の手続きのために来院すると、婦長が伝えにきました。
男は狂喜せんばかりです。
そして日付が変わる頃、医師が到着し、男性は看護師に連れられて部屋を出ていきました。
どこか遠くで微かに男性の声が聞こえましたが、医師に頭を下げていたようです。
やがて男性は部屋に戻り、看護師が去った後も子犬のような声で「よかった、よかった」と一人繰り返していました。
若いうちは大事に至る前に諭してもらえるかもしれませんが、年齢を重ねるにつれてそれなりの目で見られます。
恥ずかしい振る舞いはするまいと感じた、人の振り見て我が振り直せの出来事でした。
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