<この体験記を書いた人>
ペンネーム:夏子
性別:女
年齢:45
プロフィール:今年で結婚15年目。郊外の住宅街に住む主婦です。毎日のんびり近所の公園を散歩して癒されています。
私が30歳だったころに新商品の開発係として勤めていた会社は、社員数は40名ほどで、やる気のある社員にはチャンスをくれる風通しのいい職場でした。
2006年に営業として新卒採用されたAさんは、面接でやる気を猛アピールしたとのこと。
期待されていましたが、どの教育係も「(Aさんの教育担当を)変わってほしい」と言います。
秋頃にはAさんを同行させたい営業がいなくなり、社内で雑用をしているような状態でした。
その会社では例年、秋に開催される展示即売会に参加します。
初日に行われた朝礼で、全員に対して「このケースの展示品は安価な材料で作ったサンプルです」と説明がありました。
ところが、いざ展示会が始まると、Aさんがサンプルを商品と勘違いして売ろうとしています。
「失礼いたします。こちらの品はサンプルなので、すぐに商品を用意いたします」
慌てて割って入りましたが、Aさんはそれでも売ろうとします。
「持てば分かります。これ商品ですよ」
確認もせずに包もうとしているので、仕方なく「ちょっと貸してもらえますか」とやや強引にAさんからサンプルを取り上げ、刻印されている商品番号を確認して証明しました。
なんとなく教育係が定着しなかった理由が分かった気がしました。
入社後1年目の面談で、Aさんは新商品開発がしたいとアピールしたそうです。
しかし、製造方法の知識がほとんどないため、作れる商品を提案できません。
見かねて私からすぐにできる初歩的なアドバイスをしましたが、驚くほどスルーされてしまいました。
当時、私は販促用の資料作りも担当していましたが、上司の指示でこれをAさんに任せることになりました。
その資料というのはA4サイズ1枚に「新作」「特別価格」と見出しを入れ、商品の写真を数枚下に並べただけの簡易的な物です。
価格や仕様を入れた後だと修正が手間なので、見出しと写真を入れた段階で私がチェックすることになりました。
数日後にあがってきた資料はよくできていましたが、サンプルとして渡した過去資料とあまりにも違いすぎました。
そこに社長が通りかかり、Aさんと一緒に私のフィードバックを一緒に聞くことに。
「全体的にまとまっていますが、どちらかというと若い女性向きですね。見出しや社名の書体、端っこがくるくるしていますが我が社の名刺や看板の書体に合わせて変更しましょう。バックがピンクなのも可愛い印象に寄ってしまうので、過去資料と同じ白か淡いグレーなどにして客層と合わせましょう」
私が意見を言うと、社長も賛同してくれました。
「全く同じ意見です。特に社名の書体が違うのは問題ですね。必ず直してください」
Aさんは熱心にメモを取って聞いていました。
ところが後日、修正したと言って提出した資料は写真のサイズを微調整した程度。
書体は巻いたまま、バックはピンクのままでした。
呆れていたところ、運悪くまた社長が通りかかって資料を見られてしまいました。
社長は静かな口調で注意した後、「Aさん、私はあなたにお給料を払うのが嫌になってきましたよ」とぽつり。
社長、それは言いすぎ...と思うと、それを聞いたAさんは号泣してしまいました。
どの部署でも上手くいっていないので、彼女なりに溜まったものがあったのでしょう。
さらに運悪く営業が集団で部屋に入ってきてしまい、Aさんが泣いていたと会社中に知れ渡ってしまいました。
さすがに心が萎えたのか、Aさんはしばらくして辞めていきました。
Aさんは自分に自信があるのか他の社員のアドバイスを無視する傾向がありましたが、センスとやる気はある人でした。
最後の方に少し一緒に仕事したこともあり、今でもたまに思い出しては「もう少し違う接し方をすれば、彼女は辞めなかったかも」と残念に思っています。
関連の体験記:100円お菓子をただ食いする先輩社員。成績も人柄も抜群な「人気者」から「いじられキャラ」に転落...
関連の体験記:ブチッ...同僚に手柄を横取りされ、心の中の何かが切れた! 評価制度が崩壊したあの会社の今
関連の体験記:わざわざパワーを使って注意する係なんて...。誰かが引かないといけない貧乏くじ
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。