「悲しい別れが耐えられない」内緒で飛行機に乗ったが...ひねくれ者の私を癒してくれた離島の友人

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ボーダーズ
性別:女
年齢:40代
プロフィール:40代主婦です。50代のやさしい夫とネコの三人暮らし。早く旅行に行きたいな~と思っています。

「悲しい別れが耐えられない」内緒で飛行機に乗ったが...ひねくれ者の私を癒してくれた離島の友人 95.jpg

30年ほど前のこと、関東の実家から離れて生活をしたいと思った私は、求人誌を購入しました。

そこにはリゾートバイトの特集があり、とある離島での求人になんとなく応募。

無事採用となり、行ったことのない島で寮生活がスタートしました。

配属された部署にいたのは8名のスタッフ。

年齢は私がちょうど真ん中くらいで、すぐに慣れることができました。

私以外のスタッフは離島や海が好きで働きに来ていたので、私とは感覚がちがうな~、と思っていました。

その中で親しくなったのが、家族と移住している先輩の女性スタッフBさん(私より5歳年上)です。

休日に海や離島観光で楽しむ他のスタッフと違って、Bさんは休日が合うと「うちに遊びに来ない?」と誘ってくれました。

他のスタッフとの関りを避けて、「別に一人でも楽しいし!」と寮にこもっていた私を心配してくれていたようです。

女同士で群れて行動するのが苦手な私ですが、Bさんの家族とは親戚のように接することができ、それまで艶がなくしわしわだった時間に潤いが出てきました。

Bさんはほとんど仕事の話はせず、「ウォーキング」と言って島の中を案内してくれました。

そして、島での生活が4年を過ぎた頃のことです。

私は採用担当の男性から誘われるようになりました。

断っていたのですが、履歴書に記載した携帯番号に電話がかかってくるようになり、困り果ててBさんに相談しました。

「更新時期まで適当にごまかしておき! 社内の移動は一緒に行ってあげるから」

私の契約更新の時期も近かったこともあり、Bさんはそう言って私のことを守ってくれたのです。

しかしある日、Bさんが少し言いづらそうに話しかけてきました。

「会社から『あなた(私のこと)の契約更新はしない』って言われてしまったよ」

言いにくいであろう話を正直にしてくれました。

ただ、更新しない旨は契約満了の数カ月前に伝えなくてはいけない規定があり、それを知っていたBさんは「今回の未更新は不当ではないか」と掛け合ってくれたそうです。

そのおかげで、通告から規定の日付を経てから契約満了することができました。

今回の件は、採用担当の男性が仕向けたことと想像がつきました。

Bさんも人事に目を付けられてしまうのではないかと心配になりましたが、「大丈夫や」とニコッと笑ってくれてありがたかったです。

Bさんのおかげで退職まで数カ月の時間ができました。

島内で再就職も考えましたが、帰郷する決断をしました。

「いつまでおるん?」

「寮を出たら観光しながら宿泊し、飽きたら飛行機に乗るよ」

Bさんは心配してくれましたが、あいまいに答えた私。

離島に来て初めて声をかけてくれ、家族のように私の気持ちを考えながら接してくれていたBさん。

会社と話し合いをして私を守ってくれたのもBさん。

同僚や家族みんなでお別れ会をしてくれて、そういう時間を楽しいと思える人間にしてくれたのもBさんでした。

だから、見送られるのは悲しすぎて耐えられないと思い、最後はこっそり飛行機に乗ってしまおうと計画していました。

出発の日、予定時間の数時間前に空港に到着し、検査場内に入ってお土産を購入し、お世話になった島の人に思いを馳せていました。

出発の時間になって機内へ入ろうとしたとき、Bさんから「どこにおるん?」とメールが来たのです。

「もう飛行機乗るよ、たくさんありがとうございました」

送信して電源を切りました。

座席は窓際。

帰省の度、何度も乗った飛行機でしたが、窓の外をこんなにも見たのは初めてだったかもしれません。

「もうここから帰るんだ」と悲しい気持ちを我慢していたら、展望デッキに見覚えのある立ち姿。

Bさんが来てくれたのです。

「え? なんで? なんで分かったの?」

混乱する中、飛行機は離陸のため加速を始めました。

展望デッキで大きく手をふるBさんが小さくなっていきました。

今まで感じたことのない淋しさが押し寄せて、声が出そうになるのを必死で我慢しながら泣いてしまいました。 

私の考えていることなんて分かっていたんだね。

私の曲がった性格を受け入れ、直してくれたのはBさんでした。

最後までごめんね、本当に感謝していますと心の中で伝えました。

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