20代で結婚、2男1女を授かり、主婦として暮らしてきた中道あんさん。でも50代になると、夫との別居、女性としての身体の変化、母の介護...と、立て続けに「人生の転機」が訪れます。そんな激動の中で見つけた「50代からの人生を前向きに過ごすためのヒント」。
今回はお母様が入所する施設より、食生活の改善を指導されたという連絡を受けた中道さん。さぞかし落ち込むか反発するかと思っていたのですが...
前回の記事:「これは消費? それとも浪費?」振り返りで見える、お金の使い癖
母が入所する施設から電話がありました。
糖尿病の度合いを測るA1Cの数値が悪く、医師から食生活の改善を指導されたという連絡でした。
老人ホームでは規則がほとんどなく、入所したころは外出自由。
スーパーなどで買い食いしてもいいし、お酒やたばこだって自由です。
その自由さがたたって、糖尿病の恐ろしい合併症のひとつ、足の親指が壊疽しました。
壊疽すれば広範囲に取り除かねばならず、結局は膝下から切断、車いす生活に。
そこでやっと、食生活を改めて、酒・たばこ・買い食いの習慣は強制終了。
その後の楽しみは、施設内の自動販売機で飲み物を買うこと。
これが、またまた事件に。
水分のとりすぎで水中毒になりました。
意識障害を起こして、てんかん発作や脳梗塞の疑いで、救急搬送されること数回。
原因が水分の取りすぎであることが推測され、わずかばかりのお小遣いも強制終了。
差し入れしている500mlペットボトルのお茶も、毎日決められた本数しか飲めないことに。
そのおかげで、みるみる健康になっていきました。
生活の楽しみにと、面会の度にホームでは食べられないお寿司や、毎朝の納豆とヨーグルト、ハムなどの一品を差し入れしていました。
医師はそれらを中止して欲しいとのこと。
とはいえ、厳しすぎるのも余生を考えると酷なことなので、最少限にして欲しいと。
フルーツどっさりのヨーグルトは小さな無糖のヨーグルトを1週間に1個だけ、納豆以外の「おかず」の差し入れは禁止、お寿司の差し入れ時は、ホームの食事と差し替える、などのルールが決まりました。
もし、自分が母の立場だったら「嫌だな~。悲しいな~」と思うので、さぞかし落ち込むか反発するかと思ったら、すんなり受け入れた様子。
理由を聞いてみると、「万が一もう片方の足まで壊疽したら、動けなくなる。今は片方の足で不便ながらも車いすで施設内も動けるし、からだをコントールもできる。だから残ったほうの脚を大事にしたい」というのです。
それを聞いて「随分変わったな」と思いました。
母が元気だったころ、傍からみていると十分に満たされているのに、いつも「ないもの」に目がいっていて、「もっと〇〇して欲しい」「もっとお金があれば」「どうして思い通りにならないんだ」とイライラと不安が入り混じり、精神的に不安定でした。
それがお酒やたばこなどの不摂生な生活に傾いていったのです。
でもそれは、「ある」からこそ、「ない」ものに目がいっていたのではないかと思うのです。
今の生活のように、お金も自由も奪われてしまうと、まず「もっとお金があれば」って思わないんです。
だって使う場所がないから。
お金があれば将来の不安は消えると思っていた母は、お金の管理を娘に預けたことで不安から解消されました。
お金を手放して、安心を手にいれたのです。
そして、自由気ままにしていた頃は、自分の身体をないがしろにしていました。
喘息で入院しているのに、病院を抜け出しコンビニでタバコを買って喫煙したり。
そんな母が、残った足を大事しようとする。
人は「ない」からこそ「ある」ものに目がいくのです。
母には筆舌に尽くしがたい、思い出すのも嫌なほどの目に合わされましたが、人生の教科書のようだなと思う今日この頃です。
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