<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:59
プロフィール:認知症の義父(83歳)は、面倒を見に行っている妻(56歳)が同居していると思い込み、夜になるまで帰してくれません。
実家で義弟(47歳)と二人暮らしをしている義父(83歳)は認知症が進んでいます。
日常の生活は何となくできていますが、足を怪我して杖を突くようになって、さすがに不便だろうと妻(56歳)は毎日実家に出かけて何かと面倒を焼いています。
ところが義父は認知症のせいで妻が実家に同居していると思い込んでいて、妻が家事を終えて帰ろうとしても「なんで?」と聞きません。
やむなく義父が寝入るのを待って帰宅するので、家に帰るのはいつも夜中、私とも半別居状態です。
そうしたストレスもあるのか、義弟が家にいて実家に行かないですむ休日は、外へ出かけたがります。
「ねえ、今日はどこに行く?」
「おいおい、今日もか? こないだも隣の奥さんに嫌味言われたんだろ?」
「2人で仲良くていいですね、って言われただけよ」
「それが嫌味なんだよ。コロナで大変なんだから、あんまり出歩くな、ってことさ」
「いいから、いいから...春の服も買いたいよねえ」
あまり引き止めても機嫌が悪くなるだけなので、あきらめて出かけます。
「ああ、これもいいなあ...こっちも捨てがたい」
ストレス発散とばかりに買い物ざんまいです。
「...まあ、両方買えばいいか!」
こんな調子なので荷物は増える一方、荷物持ちは私です。
「おい、いい加減にしろよ。これ以上は持てないぞ...」
両手に袋を抱えている私を引っ張り回しながら、妻は上機嫌です。
「へえ、水族館でお花見気分か...ねえ、水族館、面白そうだよ」
ショッピングモールでポスターを見つけて、思い付きで言ってきます。
「はあ、今からかあ?」
無理やり引きずられて、バスに乗り込みます。
水族館も嫌いではありませんが、こう荷物が多くては楽しめません。
「ああ、そうねえ...まあ、コインロッカーにでも預けておけば?」
ここまで来ても「私も持つね」とは言わないのが妻のすごいところです。
水族館のロッカーに荷物を預けて、しばらく展示を楽しんだ後は帰路につきました。
また両手に荷物を抱えてバスに乗り込みます。
バスで駅前まで戻ると、また妻が何かを思い出したようでした。
「そうだ、前から見たかった映画、やってたはずだよねえ」
「おい! 今日はもういいだろ?」
「なんで? ここまで出てくるのって滅多にないし...」
「何言ってんだよ。ほぼ毎週来てるくせに」
「まあまあ、いいじゃない。デートはとことん楽しまなきゃ!」
楽しんでるのはお前だけだろ、と言いかけたところで、もう彼女は映画館に向かって歩き出していました。
「早くー! 映画始まっちゃうかも」
「こっちは荷物があるんだぞ!」
「力持ちが何言ってんの。いつも持ってくれるから好きよ!」
荷物を抱えて引っ張り回されている私を見て楽しんでいる節もあるようで、からかってきます。
もう言い返す元気もなく、映画はほとんど寝ていました。
なんとか帰宅した頃には、私はもう疲労困憊でした。
「ああ、買った! 見た! 遊んだ! すっきりしたあ!」
そう言いながら、すっかり手足を伸ばして寛いでいる妻を見て、まあ毎日お義父さんの世話で大変なんだしな、と自分に言い聞かせます。
多めに見てやりたいとは思うのですが、近所の目も気になるし、さすがに毎週出かけるのは経済的にもきついし、何となくモヤモヤしたまま寝転んだ私でした。
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