<この体験記を書いた人>
ペンネーム:むらまゆ
性別:女
年齢:44
プロフィール:専業主婦です、4年前に21年勤務した職場を体調不良で退職しました。
私は16年前、育児休業から復帰しました。
当時の職場は一つの課に50人以上が属し、その中で6グループほど分かれ、それぞれグループ長にあたる主査がいました。
うちは夫婦とも実家が飛行機の距離で、子どもの病気対応をお願いできる人がいない状態でした。
保育園に入ったばかりの子どもは入園して1カ月の間に、それまで出したこともないような高熱を何度か出し、そのたびに休まざるをえない状態でした。
「お子さんの不安にまず寄り添ってあげてね、仕事の対応は僕がするから」
主査はいつもそう言ってくれました。
「僕の子どもも保育園に入れたばかりは病気ばかりして大変だったんだよ。共働き夫婦の誰もが通る道だから、罪悪感はもたないように」
彼自身も子育てで苦労したため、職場の誰よりも私を理解してくれていたのだと思います。
申し訳ないと思いながら早退していた私に声をかけてくれて、心が軽くなりました。
今まで異動する職場、異動する職場でいじめられていた私にとって、理想的な環境の職場でした。
しかしそれもわずかか3カ月程で終わってしまいます。
きっかけは、主査が出張で不在だった日に私が仕事でミスをしたことでした。
相手にもすぐ連絡をして対応も完了し事なきを得たことを、係長に連絡したところ、突然係長が激高したのです。
「お前は人間として、足りないところばかりだ。育休復帰せずに退職すればよかったのに! できない人間は不要。俺の係長生命を縮めるようなことはするな!」
係長だからといって、なぜそこまで言われないといけないのか理解できませんでした。
悔しくて泣きました。
その後、出張から戻って事情を聞いた主査は係長に抗議をしていました。
「あの子に人間として足りないところはない。別の職員に顛末を聞いて、相手先にも確認したら対応は完了していたとのことだ。一生懸命頑張っている人を貶める必要はない」
涙が出るほどありがたくて、私は主査にお礼をしました。
主査は「君は誰よりも頑張っているすばらしい人間だよ」と言ってくれ、さらに涙が出てきました。
ですが、この一件の後から係長の主査への態度があきらかに変わっていきました。
その係長に腰巾着のように従っている別のグループの主査の態度も変わっていきました。
係長は1、2時間ごとに主査を些細なことで呼び出して、大声で怒鳴り散らすのです。
大事な会議の日程を主査にだけ言わないで、遅刻すると怒鳴りつけたりと、非常に陰湿でした。
次第に主査は壊れていきました。
顔色が悪くても仕事に来ていましたが、年度替わり直前の2月以降、職場に来ることができなくなりました。
グループ全員、主査が休むのを責めることはできませんでした。
結局、主査は異動することになりました。
そして最後の日、10分だけあいさつに来た主査に私はこう伝えました。
「この職場の1年間をすべて忘れて新しい職場に行ってください。私は主査の優しさに救われました。感謝しています」
その後、係長はすぐ出世しました。
世の中の不条理を感じました。
いい人は必ずしも得をしない悲しい話です。
ですが私は心の中でずっと主査に感謝をしています。
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