<この体験記を書いた人>
ペンネーム:fennel
性別:女
年齢:55
プロフィール:地方在住の専業主婦。残りの人生、悔い無く生きるための方法を模索中です。
私は地方に住む55歳の専業主婦です。
2020年のとある夏の日の事でした。
80歳の私の実母が、どうしても隣の市にある大手銀行に行きたいと言い出しました。
その銀行は私たちが住んでいる市にはありません。
父が他界してから、母の預貯金などは母が自分で管理していたので、私は母がどこの銀行にどれくらいの預金や財産を所有しているかなど知る由もありません。
「は? 今ナニ銀行って言った?」
私は思わず聞き返してしまいました。
すると母はもう一度その銀行の名前を言いながら、定期預金の通帳を持って来ています。
「昔の友人の付き合いで無理やり作らされたのよ。私ももういい歳だしそろそろ終活でも始めようと思って、タンスを整理してたらこの通帳が出てきたの。見たら結構貯まってたのよね。解約して全部下ろそうかと思ったんだけど、この銀行、この近くには無いよね? 遠くて1人では行けないから...」
要は私の車で連れて行って欲しいということでした。
いつもは1人で自由気ままに車で出歩き、免許返納を勧めてもどこ吹く風で、友人も多く趣味も多彩な母が突然「終活」を語り始めたことに、私は少し動揺しました。
頭の中ではいつも、母に万が一のことがあったらどうしようとか、将来的に自立が困難になったら施設入所も考えなくては...。
そうしたことをじっくりと、腰を据えて話し合わなくてはならないと思っていた私。
それだけに、終活というワードが突然母の口から飛び出してきたので、一気に現実味を帯び、一瞬焦りを感じると同時に切ない気持ちが湧き上がってきてしまいました。
定期預金の解約ってネットでできないのか? と思いましたが、母が電話で銀行に確認したところ、解約はご本人が窓口に来て手続きをして欲しいとのことでした。
しかし、一時間以上かかる隣の市まで、80歳の母に運転させる訳にはいきません。
ところがなんともタイミングが悪いことに、私ときたらちょうど二週間前に目の手術をしたばかりで運転はドクターストップがかかっていたのです。
それでも母は何としても早く行きたいようで、関東に住んでいる姉に頼んでみると言い出しました。
このコロナ禍に、感染者の多い関東に住んでいる姉をあえて呼ぶのか、しかも自分はハイリスクの高齢者なのに!? と思ったのもつかの間、その日の夜にはもう頼んでしまいました。
姉も最初は渋っていたのですが、最後は拝み倒されてしまったようで、結局姉が来てくれることになりました。
わざわざPCR検査の陰性証明を持参して、母を銀行に連れて行き手続きを全て済ませてくれました。
これで母の終活の一つが無事に終了しました。
ちなみに姉曰く、解約ではなく満期だったとかで母はホクホク顔だったそうです。
満額がいくらだったのかは分かりませんが、その中からせめても姉の往復新幹線代とPCR検査代ぐらいは出してあげて欲しいと言わずにはいられませんでした。
姉には感謝しかありません。
これからも母の終活は続くと思われます。
果たして次は何が飛び出してくるのやら。
ちなみにその後、姉は関西に引っ越してしまったので今後はそうそう頼れません。
厄介な終活援助依頼が来ませんようにと祈る日々です。
関連の体験記:気づいてしまった...中学校の給食室で働いていた私が目撃した、栄養士の「ある行為とその顛末」
関連の体験記:娘には言えないけど...70歳手前、貯蓄はキープしたい私たち夫婦にとって「可愛い孫」への出費が痛い
関連の体験記:共働きの息子夫婦に頼まれ、2歳から預かった孫娘。彼女が「小学校で書いた作文」で嫁との関係が...
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。