20代で結婚、2男1女を授かり、主婦として暮らしてきた中道あんさん。でも50代になると、夫との別居、女性としての身体の変化、母の介護...と、立て続けに「人生の転機」が訪れます。そんな激動の中で見つけた「50代からの人生を前向きに過ごすためのヒント」。今回のエピソードは、ある日、中道さん宅を訪れた移動スーパーのお話です。
前回の記事:味見は「舌」でなく「鼻」で。私の行動を左右する「香りの効用」
コロナになり仕事は全て自宅で完結。
年末からは新型コロナウイルスの感染拡大があり、お出かけすることもほとんどなくなりました。
まるで隠居生活のようだなぁと思うこともしばしばあります。
そんなある日のこと、玄関のチャイムが鳴りました。
以前の私なら居留守を決め込むのですが、やっぱり家の中ばかりだと刺激がなくって、思わず愛犬を抱いて出て行っちゃいました。
そこには赤いエプロンをつけた小太りな中年男性の姿が。
男性「はじめまして駅前ス―パー○○のものです」
私「おおー知ってまーす。たまに行きますよ」
男性「ありがとうございます。奥さん普段はどちらでお買い物を?」
私「それがさぁ、コロナだし、寒いし、自転車もないしさ。スーパー行かれへんねん」
男性「でしたら、車ですか?」
私「免許もないし、なので見てあの段ボール。宅配食材よ」
と、その日の朝に届いた宅配食材の空き箱を指さして見せる。
男性「じつは、このご近所を移動スーパーで回ろうと思ってますねん。どうでしょうか? ご自宅の前にトラックで商品を運びますから見てもらえませんか?」
私「それは、めっちゃいいね! ご近所さんは高齢者が多いからきっと喜ばれるよ。営業がんばって! 来てくれたら買うわ!」
と言ってチラシを1枚いただいて家の中に入ったのでした。
この家に引っ越してきた25年前は、ご近所に大小5つのスーパーがありました。
でも、駅中に品揃えのいいデパート系列のスーパーができ、大型ショッピングモールもできたこともあって次々と閉店に。
今や2つだけが生き残っていて、宅配食材で足りないときは、そのうちの1つを利用しています。
チラシを読んでみると、刺身・肉・野菜・果物などの生鮮食品から、お米やトイレットペーパーなどかさばって重いものまで、400品目1200点もが、軽トラの荷台に積まれてやってきます。
家の前で、見て、選んで買物ができるのです。
気になるお値段は、店頭価格より「+10円ルール」。
我が家から駅前のスーパーに行くためには、バスで往復460円。
ですので、46品目以上買わない限り、移動スーパーのほうがお得な計算。
車の免許もない、自転車も持ってないような私には、なんて有難いサービスなんだと思いました。
そういえば以前、こんなことがありました。
職場近くの郵便局の前でのこと。
タクシーから降りてこられた高齢のご婦人が、手押し車にス―パーのレジ袋を山盛りで積んでいました。
よろよろと動くので、「大丈夫ですか」と声をかけると、めちゃくちゃ大きな声で「さわるな!」。
下手に手助けされるのが逆に迷惑だったのか、感情のコントロールができないのか分かりませんでしたが、こちらからみたら今にも転びそうで見てられなかったのに、「人に親切にする難しさ」を知った出来事でした。
また、先日ス―パーで見かけたのは、とあるご年配のご婦人の買い物の光景。
その買い物の量があまりにも多くて、これはひょっとしたら認知症ではないかな?と心配に。
これまでにその方をスーパーでよくお見かけしていたので気づいたのですが、向こうは私のことを知りはしません。
「あぁ、私ではどうもできないよな...。スーパーの店員さん気づいてくれたらいいけどなぁ...」なんて思っていたのでした。
私のようにまだまだ元気な50代でも、家に引きこもりがちになると世間との接点はなくなります。
独居の高齢者なら特に。
たとえ、ひとりで外出したとしても、この世知がらい世の中では他人が親切心から関わりをもってくれることはまずないでしょう。
そう思っていた矢先の移動スーパー。
しかも福祉事業の一環でもあるようなのです。
大きなスーパーよりも身近な存在であり、週に1、2度会話をするようになれば、親近感もわいてくるもの。
ちょっとした相談ごとを聞いてもらったり、体調の変化にも気づいてもらえる、なんてこともあるかもしれません。
なんて素晴らしい福祉ボランティアだろうか、と感心しました。
こういう事業がどんどん拡大すれば豊かな国に近づけるのではないかと信じています。
ひとまず私は、この店でしか取り扱いがないボローニャのデニッシュパンをリクエストして、利用を後押しするつもりです。
【まとめ読み】50代のこれから、そして悩み...中道あんさんの記事リスト
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