「もしかして徘徊かも...?」道を尋ねてきたお年寄りへの対応方法/中道あん

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前回の記事:父の最期を飾った、美しく哀しい満開の桜

普段外出先でお年寄りに道を尋ねられたら、普通にその場所を教えますよね。
その時に「ちゃんと行けるかな?」と思う他に、「もしかして徘徊では?」と感じたことはないでしょうか?

つい最近まで勤めていた職場は大きな道路に面した場所にあります。時々配達先が分からずトラックの運転手さんがやってきたり、バス停の場所を尋ねに人がやってきたりしていました。

そんなある日のこと、最寄り駅の方角を聞きにお年寄りが来ました。最寄り駅へ行くには、ここから駅までのバスに乗らなければなりません。普通ならまずバス停を探すはずです。

高齢の母と暮らしていた経験から「うん?なんだかおかしい」と直感が働きました。

「少しイスに腰掛けましょうか?」と促すと、「ありがとう」と素直に腰掛けてくれました。「今日はどちらから?」と聞くと、今日の出来事をすらすらと話してはくれますが、「随分歩いたわー」「暗くなってきたらいつもの景色と違うのよね」「方向が分からなくなるわー」と。

家に帰れないのだと確信しました。

「暗くなるとわかりませんよね」
「たくさん歩いて疲れたでしょう」
「もうここからはお巡りさんに送ってもらいしょう」
「その方が安全だしね」
嫌がられるかと思いましたが、とっても安心した様子で素直に「ありがとう」と答えてくれます。

 

ここ3年ほどのあいだに、年に1~3人ほどの割合でお年寄りの迷子さんを保護しました。

まず聞くことはお名前。年齢は多くの場合間違っていました。自宅の電話番号もあやふやな人が多いです。ご自宅に電話をかけてみると、ずいぶん心配されており、探されている場合がほとんどでした。

住所の分からない人には「保険証を持っていますか?」と聞きます。そうすると、大抵バックをごそごそとすれば出てきます。それから交番に電話をかけて、名前と住所を告げて迎えに来てもらいます。

色々と手続きもあって面倒ではありますが、無事に家まで帰るには警察に保護してもらうことが一番ではないかと思います。


こんなこともありました。手に3点杖を持って駅の方向を聞きに入ってこられたお爺さん。ピンときて椅子に腰をかけてもらい、一休みしてから事情を聞いてみました。自宅の並びの整形外科に行くはずが、歩いても、歩いても病院にはつかず、「おかしいなぁ。こんなに遠かったかな」と道を確認したかったそうです。

指さす方角は病院とは全く違う方向。住所をお聞きするとちゃんと答えてくれましたが、健康な大人でも歩かない、車で20分ほど離れた場所から杖を頼りに歩き続けられたようです。お悪い足でよく歩き続けられたなと、驚いたものです。

まず受診予定の病院に連絡を取り、その後自宅に電話をかけると、奥様が緊張した声で出られ、病院やご近所を探し回っていたと教えてくれました。無事を確認できて安心された様子が電話口の向こうから伝わってきました。ご自宅の前で奥様に出迎えてもらうことにして、タクシーを呼び、帰っていかれました。

また、いかに自分はボケていないかを延々と喋り続けるご高齢のご婦人がいらしたことも。職場周辺を一周してご自宅に送っていき、出迎えた息子さんに「どこに行ってたんや」と怒られている様子を見ると、先ほどの延々と聞かされた理由がわかる気がしました。

 

以前、駅前に尋ね人のポスターがあちこちに貼られていました。それが徘徊で行方不明になっているからだと気付いたのは保護の経験をしてからです。これまでに保護したお年寄りは一見普通にしか見えません。でも少し話してみると矛盾していることに気が付きます。

お年寄りに道を尋ねられたとき、"ちょっと世間話をしてみる"心の余裕を持てたら、行方不明事件も減るのではないかと思った次第です。

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中道あん


「女性の生き方ブログ!50代を 丁寧に生きる、あんさん流」主宰。Ameba公式トップブロガー。結婚22年で夫と別居。自立した人生を送るため、正社員として働きだしました。社会人の長男、大学生の長女と同居しています。要介護2の実母は3年半同居生活の後有料老人ホームにて暮らしております。

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『50代、もう一度「ひとり時間」』(KADOKAWA)

20代で結婚、2男1女を授かり、主婦として普通に生きてきた。でも50代になると人生の転機が頼まれもしないのに訪れる。夫との別居、母の介護、女性としての身体の変化、子どもたちの成長。そこから見つけた「ひとりの楽しみ」をあますところなく伝え続ける、「あんさん」流のアラフィフライフ。50代からの人生を前向きに過ごすためのヒントが満載。

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