<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:58
プロフィール:公務員です。独り立ちしている娘(25歳)と息子(23歳)とのビデオ通話に挑戦してみました。
私には娘(25歳)と息子(23歳)がいます。
2人とも社会人として独り立ちして、家を離れて1人暮らしをしています。
ようやく子どもが手を離れてのびのびできるな、と思っていたのですが、妻(56歳)との2人暮らしはなかなかに寂しいものです。
電話やLINEでちょくちょく連絡をして紛らわせています。
ゴールデンウィークの頃はいつも帰省していた2人ですが、今年はコロナ騒ぎのただなかでそれもままなりません。
自粛ムードの中でこちらも出かけるわけにもいかず、ついつい電話やLINEの回数も増えていきました。
「やっぱり寂しいなあ。顔ぐらい見たいもんだ」
「......そう言えばさ、LINEにビデオ通話ってあるじゃない? あれって使えるの?」
妻が思いついたように言い出しました。
今まで、特に必要は感じていなかったのですが、ビデオ通話もいいな、ということになりました。
さっそくLINEで2人にメッセージを送りました。
「こっちから呼び出してもいいけど、いまいちよく分からんからな。向こうからやってもらった方がいいだろ」
2人ともビデオ通話がよく分からないので、こういうのは若いものにやってもらおうというわけです。
しばらくすると、LINEに着信がありました。
「お、はるたか(息子の名)だ。......えっと、普通に受ける感じ? このボタンか?」
ビデオカメラのようなマークを押すと、画面に息子が現れました。
「パパさん、ついにビデオ通話デビューってわけ?」
「何、顔を見たくてな......ってひどいひげ面だな」
「連休中は自宅待機なもんで、面倒でさ......」
ひげは伸びていますが元気そうです。
「ビデオ通話もいいもんだな。顔が見えるのはホッとするよ」
「そうだね」
しばし会話を楽しみ、ビデオ通話の掛け方も教えてもらいました。
息子との通話を終えましたが、娘からは返信もありません。
「よし、やり方は分かったから、こっちから呼び出してみよう」
覚えたばかりの呼び出しに挑戦です。
ところが、呼び出し数回で拒否されてしまいました。
「なんだ? なんか間違ったか?」
手順を確かめ、時間も空けて数回呼び出してみましたが結果は同じです。
「うまくいかないのかなあ......」
落ち込んでいると、娘からメッセージが入りました。
「ビデオ通話はかんべん。こっちは元気だよ」
そっけない返事に妻と2人で慌てました。
「どういうことだ?」
「何か見られたくない物でもあるのかしら」
「......もしかしたら、男がいるとか?」
「まさか! ......まあ、そういうことがあっても変じゃないけどねえ......」
「でもそれで、ビデオそのものを断るか?」
「......自宅にいないんじゃないの?」
「出先だって別に......」
「いちゃいけない場所にいるとか......」
「3密か? ......それはあるかもなあ」
心配は深まるばかり。
「電話ならどうだ? 見られちゃいやな所にいても、それなら出るんじゃないか?」
「でも、パーティー会場とかにいたら、出ないんじゃない?」
「そしたらLINEで、ならぬことはならぬだぞ、って送ってやるさ」
恐る恐る電話をかけました。
「はい、もしもし」
「ああ、よかった、電話には出られるんだな」
「は? ああ、ビデオ通話のこと? 別に悪いことはしてないよお」
「じゃあ、なんだ? たまに顔を見るのも許してもらえんとは......」
ふたを開けてみると、自粛期間で部屋で過ごす時間が長く、インスタント食品の空き容器や脱ぎっぱなしの服などが散乱した部屋は見せられたものじゃないということでした。
「......少しは片づけとけよ。そのうちまたビデオ通話を呼び出すからな」
「めんどいなあ、電話でいいじゃん」
面倒くさがりの娘の返答に、育てた責任を感じながら妻と顔を見合わせました。
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