<この体験記を書いた人>
ペンネーム:となりのトトロ
性別:男
年齢:48
プロフィール:地方都市の郊外の住宅街で、共働きの妻と二人暮らしをしています。静かな環境を求めて家を購入しました。
結婚して25年。
残念ながら子どもには恵まれませんでしたが、夫婦二人で穏やかに過ごしたいと思って、郊外の静かな住宅街に家を求めました。
「いい所ね」
妻(47歳)も気に入って、少し通勤距離が長くなった以外は不満のない生活が始まりました。
隣家に二人であいさつに伺うと、愛想のよいご婦人が出迎えてくれました。
「あら、お隣が引っ越されて寂しかったんですよ。よくいらっしゃったわね」
これが隣家のおばさん(57歳)との出会いでした。
「一人住まいなんですか?」
玄関に女物の靴しかないのに気付いた妻が何の気なしに聞きました。
すると急に顔を曇らせたおばさんは「亡くなったの、主人」とため息交じりに漏らしました。
「え? あ、これは申し訳ない......」
「楽しみにしていた同窓会に出かけて、その帰りに交通事故であっけなく」
「そうなんですか、これは何とも、どう言ってよいやら......」
慌てて場を取り繕うしかありませんでした。
しかし、どぎまぎしている我々を見て、おばさんは続けます。
「私は止めたんですよ、卦が悪いからってね」
「は? け、ですか?」
「占いで外出は凶って出てたのよ、無理にでも止めておけばよかった」
表情は真剣です。
後日、別のご近所の方から聞いたところ、もともと占いは好きだったそうですが、ご主人の一件があってからますます激しく傾倒するようになった、とのことでした。
数日後、おばさんから突然話しかけられました。
「ご主人、今日は傘をお持ちになった方がいいですよ」
「え? 傘ですか?」
思わず空を見上げましたが、抜けるような青空です。
「占いでね、午後から雨ですのよ」
そう言いながらおばさんは家の中に入っていきました。
その日は見事に雨が降りました。
気になって持って行った傘が役に立ちました。
通りすがりにおばさんに会ったときのことです。
「あら、持っていらっしゃったのね」
「ええ、助かりました」
「よかったわ......うちの人も信じてくれていたらねえ」
おばさんの決め台詞が出ました。
それからは、ことあるごとに占いによるアドバイスや予言めいたことを告げられるように。
「今日はごみは捨てない方がいいですよ」
「お買い物をするなら今日はお勧め」
それを聞いて私もなんとなくいい方に向いた時には感謝の言葉を返す、なんてやり取りを続けておりました。
そんなある日、おばさんが我が家の周りをじろじろと見て回っています。
まるで我が家の問題点でも探っているかのようです。
「何か探し物でも?」
「いえね、いやな卦が出たものだから」
「と言いますと?」
「我が家の北東、つまりお宅に火難の相が出てるのよ」
どうやら火の気がないかをチェックしていたようです。
「いや、これはご心配をおかけして、十分気を付けますよ」
「相ってものは注意だけで避けられるものではないのよ。きちんとお祓いしてね......」
何やらお札のようなものを取り出し、それを壁にこすりつけて何事かを唱えていました。
「......はい、これで良し」
そう言って満面の笑みを浮かべるおばさんを見て、ちょっと恐ろしくなりました。
さらに何日か経った時のことです。
「勝手口のカギ、開いてましたよ」
帰宅するといきなりそう注意されました。
「え、あ、それはどうも。でも、なんでご存知なんですか?」
「今日の占いで盗難の相が出てたのよ。それでお留守の間にちょっと戸締りの確認をね」
悪びれずに答えられ、背筋がゾッとしました。
この分では、そのうち家の中にまで入って来られかねません。
そういう意味でも戸締りは気を付けるよう妻に話すと「怖いわね、なんか、何もかも調べられそう」と表情を曇らせました。
占いで出たことを心配して、よかれと思っているのは分かりますが、プライバシーの侵害もいい所です。
今日はどんな占いが出るものやら気が気ではありません。
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