<この体験記を書いた人>
ペンネーム:yuz
性別:男
年齢:47
プロフィール:飲食業者向けの資材納品会社に勤めています。営業の仕事もきついですが、もっと大変なのは我が上司です。
飲食業を営むみなさんに、食器や梱包用品などを納品する会社に勤めて20年以上になります。
営業一筋でやってきたことで、仕事にはそれなりの自負があります。
「人こそ宝」
この仕事、人間関係が左右しますから。
昨年度までの営業課長(55歳)は私と同じポリシーの持ち主で、顧客満足度を第一に考えるやり方で成績を上げてきました。
春の異動で昇任された彼の後に、新しい課長(53歳)が来ました。
「変わった人らしい」という噂は着任前から流れていました。
「昨日はどうしたんですか? 熱でもありましたか?」
着任間もないころに新しい課長は突然有休を取りました。
所用があって休みます、と電話一本での欠勤だったため、同僚共々ちょっと心配していました。
「いや、昨日はね、外出は凶と出たんだよ」
「は?」
改めて話を聞くと、新課長は四柱推命という占いに凝っていて、プライベートはもちろん、仕事のこともすべてそれに従うというのです。
「いやあ、おかげで前任では大きな仕事もまとめられてね」
そう得意顔です。
改めて「変わっている」と言う噂の詳細を課長が以前所属していた広報部の知り合いに聞くと、「占いで出たから、SNSに公式アカウントを作るって言い出してさ......」とのこと。
時流に乗ったアイデアは功を奏し、広報経費を大きく削減、課長としての彼の評価も上がったとのことでした。
「前からそのケはあったんだけど、それ以来、『占い信仰』を憚らなくなっちゃってさ。毎朝、その日の占いをお告げになられてね、朝令暮改の連発で振り回されたよ......いやあ、ご愁傷さま」
そう言って苦笑されてしまいました。
まだ遠慮していたのか、朝が特に忙しい課のせいなのか「お告げ」こそありませんでしたが......。
「それは、午後からにして」
「日が悪いなあ......その納品は来週に回そう」
何かあるごとにとか占いの結果で仕事の采配は決められていました。
「あれ? この○○産業って何?」
「ああ、課長の指示で、ストローの納品先を変えたんですよ」
「聞いてないよ! □□商店さんは?」
「課長が納品終了の連絡入れてましたよ」
□□商店さんは私が懇意にしてきた業者です。
「□□商店さん、切ったんですか?」
「ん? ああ、○○さんに変えたよ」
「どうしてですか? 長くお付き合いのあった業者さんなんですよ。何か不手際でも?」
「いや、何かね、よくないんだよなあ、□□さんは」
「だから何が良くないんですか?」
「□□さん、北西にあるだろ? うちの会社から見てさ」
「は!?」
課長の占いによると今年北西は「忌み方」なのだそうです。
「だから、吉方にある○○さんとね、今年はやっていこう、ってわけだよ」
満面の笑みで語る課長を見ながら、開いた口がふさがりませんでした。
私のポリシーなどあったものではありません。
慌てて□□商店さんに連絡を入れましたが後の祭り。
「永らくお世話になりました」
電話口でもぶっきらぼうに吐き捨てられてしまいました。
さしあたって営業成績が落ちるとか、大きな損害が出るとかいう事態には陥っていません。
しかしこのまま進んでいくとなると、今までの顧客対応が水の泡になりかねません。
今日の課長の占いは吉と出るか凶と出るか、気が気ではない日々が続いています。
関連の体験記:「今日、落とし物に注意ね」家族全員の誕生日を「占いアプリ」に登録してアドバイスしてくる50歳の夫
関連の体験記:朝8時前に「悪夢のピンポーン」。義母が新生児を見に親戚一同を引き連れ襲来!
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。