<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ねこのきもちがわからない
性別:女
年齢:52
プロィール:亡くなった義父は車の運転が乱暴で、加齢に伴いさらに危険な兆候が。運転を止めさせようとしたのですが......。
「またか」そう感じてしまうほど頻繁に起きているのが高齢者による運転トラブルです。そしてそのたびに出てくるのが家族の責任論。これらを見聞きするたびに思い出すことがあります。それは、「どんなに手を尽くしても家族には運転を止めさせることができなかった」という辛い現実です。
我が家の場合、心配の対象だったのが義父でした。数年前、90を目前に他界したのですが、その前日まで車に乗っていたのです。
そんな義父はもともと気性が荒くてワガママな人でしたので、車の運転も荒っぽい。そこに年齢なりの衰えが重なり、「義母の足を轢いた」とか、「ドアを開けたまま発進した」など、それまでにはなかった小さなトラブルを頻繁に起こすようになりました。そんな状況を見ていると、「大きな事故を起こすかも」と心配が頭をよぎります。そこで、義父に車の運転をやめてもらうべく、いろんな方法にチャレンジしました。
まずは話し合いから。運転トラブルが増えていること、大きな事故の心配をしていることを告げ、運転を控えてほしいと伝えました。そして、普段の生活はサポートすることを告げたのですが、義父はのらりくらりとやり過ごそうとします。
それでも諦めず話合いにチャレンジしたのですが、今度は大声を上げて追い返す、話し合いの場から出て行ってしまうなど断固拒否の姿勢を取るようになりました。これでは話し合いを断念するほかありません。
次なる方法は医師への相談です。実は、私の実父も同じような状況だったのですが、医師の丁寧な対応のおかげで免許返納に成功した経験がありました。この時の成功体験を義父に当てはめてチャレンジしてみたのですが、あえなく失敗。医師の丁寧なアドバイスに対して「これまで一度も事故を起こしたことはないので心配ご無用です」と、あっさりと断ってしまいました。この一度も事故がないというのは、実際はウソなのですが......。
それなら今度は警察に相談です。父の今の状態、最近起こした運転トラブル、これまでのチャレンジの失敗などを説明してみました。しかし、警察の方から言われたのは「打つ手がない」ということ。法律では事故が起こらない限りは取り締まることも助言もできないとのことでした。それでは困るとかなり粘って相談してみたのですが、得られたのは同じ結論で、絶望した私達。
もう、こうなると車自体を取り上げるほかありません。大立ち回り覚悟で義父に車のキーを持ち帰ることを告げました。これに義父は激昂し、夫に向かって「お前、絶対に許さん! 覚えとけ!」と怒鳴り散らしていました。
嫌な思いはあったにせよこれで一安心......のはずでした。しかし、これが甘かった。直後に義母から電話があり「自宅に車屋さんが来ている」と告げられました。なんと義父は、「車を取り上げるのなら新しく車を買い替えるだけだ!」と義母に告げ、早速知り合いの車屋さんを自宅に呼びつけていたのです。
これには家族も打つ手はありません。きっと、何度取り上げようとも義父は同じことを繰り返すでしょう。義父に車の鍵を返し、「本当に心配している」と告げるのが精一杯。その後も何度も話し合いに出向いたのですが、義父と話し合うことは1度もないまま、結局亡くなる前日まで車に乗り続けた父でした。
結果的に大きな事故を起こすことはありませんでしたが、それはあくまで結果論。自分から運転免許の返納という英断を下して欲しかったと今でも思っています。高齢者の運転、家族はその責任を感じ何とか手を打とうともがいています。しかし、運転を止められるのは本人の意思だけ。この現状をどうしたら変えられるのか悩んでいます。
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