<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:59
プロフィール:若い頃は車にこだわりがあり、どうせなら人に自慢できる車を、と思っていました。今では走ればそれで十分ですが。
最近の車の進歩は目覚ましいものがあるなあ、と思っていたら、いよいよ高速道路なら完全に車におまかせできる時代が近いようです。
本を読みながらでも車を運転できるようになるのも夢ではない、というニュースに、それって運転って言うのか、とつっこみを入れながら、手痛い記憶を思い出しました。
今から30年ほど前のことです。
就職してすぐに買った中古車が故障したのを機に、新車の購入に踏み切りました。
まだ独身貴族でしたし、どうせ買うなら人に自慢できるようなのにしたいと思い、あれこれ考えました。
「スタイルで選ぶのもいいけど、やはり機能面を重視したいな...」
そうして選んだのは、四輪駆動にアンチロックブレーキを搭載した、当時はまだ珍しいRV車でした。
冬場の雪道や凍結路に悩まされていたことと、その頃ハマり始めていたスキーに行きやすいという点が決定要因でした。
「フフ、苦労してるな」
雪の坂道で立ち往生しているスポーツカーの脇を駆け上がっていくのはなかなかの快感。
四輪駆動のパワーは想像以上でした。
それ以上に素晴らしかったのはブレーキ性能です。
ガチガチのアイスバーンで強めのブレーキをかけても、アンチロックブレーキの効果は素晴らしく、全く横滑りすることはありません。
そんな冬のある日、久々の大雪に見舞われました。
朝は大したことはなかったのですが、日中に本降りになり、帰る頃には膝丈ほどの深さになっていました。
「うわあ、ひどい。途中で車動かなくなったらどうしよう」
同僚の女性(20代だったと思います)が窓から眺めてぼやいています。
「なんだったら、送っていきますよ」
いいところを見せようと声をかけました。
「え、あ、でも...明日、車がないとひどいから...」
「じゃあ、一緒に行ってあげますよ。もしもの時は助けてあげられるでしょ」
私がそう言うと彼女も安心できそうだと納得したので、彼女の車の後をついていくことになりました。
彼女の車は軽自動車で、深い雪の轍にハンドルを取られ、フラフラしながらもなんとか進んでいきました。
私はその後ろを余裕のハンドルさばきで追いかけていました。
彼女の車はスピードが出ないので、無意識のうちに車間距離が詰まっていました。
「あ、やった」彼女の車がアイスバーンでスリップして、車体を横に向けてしまったのが見えました。
私は、ブレーキ性能に自信がありましたので、急ブレーキを踏み込みました。
アンチロックブレーキはしっかりと効果を発揮し、車体はまっすぐに彼女の車に向かって進んでいきました。
「え? あれ? スピンはしないけど...と、止まらない!」
アンチロックブレーキは、確かに車体の向きはまっすぐに保たれます。
しかし、ブレーキの制動力を自動調整して車体の姿勢を保つため、制動距離は伸びてしまうのです。
思わず詰めてしまっていた車間距離も災いして、文字通りまっすぐ、彼女の車に向かっていってしまいました。
私の車は、そのまま横を向いた彼女の車の横っ腹に衝突。
幸い、かなりスピードは落ちていたので、お互い怪我はありませんでしたが、彼女の車のドアが大きくへこみ、私の車のフロントも傷つきました。
「スピンしないのはすごいけど、やっぱりピタッと止まるってわけにはいかないんですね...」
ドアを見つめながらため息をつく彼女に、返す言葉もありませんでした。
追突なので、責任は私です。
保険を使って修理をしましたが、結構な散財となりました。
車の性能を過信すると痛い目を見ることを痛感した出来事でした。
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