ディープな街にある「スナック えむ」店主、霊感ゼロのアラフォー作家、えむ。「お礼に一杯奢るから」を謡い文句に、ホラートークをしてくれるお客さまを待つ。今宵は噂を聞いてやってきた警備員のあきさん(52)の話、「何度も何度も、落ちて来る」。今回は第15回です。
※実際に身の周りで起きた実体験エピソードに基づき構成しています。
【前回】神社で「絶対にやってはいけない」タブーを犯した者の末路は/今宵もリアルホラーで乾杯「神社の呪い」
「長いこと警備員をやって来たけど、あんな思いをしたのは後にも先にも一度きりだよ」
そう言ってウイスキーの水割りを飲み干すと、あきさんは「とっておき」だという話を始めました。
※ ※ ※
【警備員・あきさん(52)の話】
俺が警備員を始めたばっかりの頃だから、30年ほど前の話なんだけどね。
最初に配属されたのは、駅前にある6階建ての大型スーパーに併設されている平面式の駐車場。
スーパーが閉まった後も終電近くまで営業していて、夜帯(夜のシフト)は一人で回さなきゃいけない現場だったんだ。
配属初日、先輩警備員にいろいろ教えてもらったんだけどね。
その先輩が話の最後に「ここの夜間の警備は...いろいろ気を付けろよ~」なんて冗談っぽく言っててさ。
何を気を付けていいかわかんないけど...まあ「事故が起きないように」ってことだよな、なんて思ってた。
駐車場内には、小さなプレハブ小屋がスーパーの壁にくっつく形で建てられていて、暇な時はそこで待機していていいってことになってたんだ。
ある日の夜、車の出庫誘導をしていると
ドンッ!
と、何か重い物が落ちたような音が聞こえた。
驚いて辺りを見渡したんだけど、何も落ちている様子はない。
おかしいなあなんて思いながら、その日は勤務を終えたよ。
でも、その後も夜になるたびに
ドンッ!
という音を聞いたんだ...何度もね。
でもやっぱり、周囲に何も変わった様子はなくてさ。
(どこかで工事をしていて、その音がスーパーの壁に反響しているのかな?)
と、そのうち大して気にしなくなっていた。
しばらく経ったある日のこと。
その日はとにかく寒い日でね、普段なら忙しくなる時間帯だったんだけど、人出が少ないせいか車の出入庫もほとんどなくてさ。
俺は小屋で暖をとってたんだ。
(さて、そろそろ閉門の時間だな...)
と駐車場入り口に向うため、小屋を出ようとした時...
ドンッ!
いつも聞こえるあの音が、自分の真上で聞こえたんだ。
(何かが落ちてきたんだ!!)
と思って、とっさに頭をかばってその場にしゃがんだよ。
けど、天井を見ても歪んでる形跡はない。
(おかしいなあ?)
念のため確認しようと外に出て小屋の屋根を見たんだけど、やっぱり何ともなってない。
(なんだったんだ?)
不思議に思いながら、門を閉めに行こうと小屋に背を向けて歩き出した瞬間
ドンッ!
すぐ真後ろでまた、何かが落ちる音がしたんだ。
俺は恐る恐る振り返った。
「ヒッ!!」
待機小屋の上に、スーツ姿の男がうつ伏せで倒れていたんだ。
顔だけ俺の方に向けて...。
【今宵もリアルホラーで乾杯シリーズ】
・この絵、何かがおかしい...絵の中にいるはずの女の子が/「呪われた絵」
・怖い、引きずり込まれる! 夢で見た「黒い影」の正体は/「悪夢の道」
・誰もいないはずなのに...! 背後から奇妙な「音」が/「祓っちゃだめ!」
・え「命に危険」がある遊び、続けます?/「こっく●さん」
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。