ディープな街にある「スナック えむ」店主、霊感ゼロのアラフォー作家、えむ。「お礼に一杯奢るから」を謡い文句に、ホラートークをしてくれるお客さまを待つ。今宵は街の大先輩ママ、のりさん(73)の話、「紅の呪い」。
※実際に身の周りで起きた実体験エピソードに基づき構成しています。
【前回】体育館にうずくまる「何か」。みんなは見えて...ない?/今宵もリアルホラーで乾杯「夜の体育館」
私がここでお店を初めてからずっとお世話になっている大先輩ママ、のりさん。
「こういう街で50年以上お店をやってるとね、怖い思いなんて、嫌って言うほどしているものよ。さて、どんな話がいい? ああ、この街の人間関係の話なんてどう? きっとえむちゃん、眠れなくなるくらい怖いやつがあるわよ」
「そ、その話も気になりますが、今日はもっと、ホラー的なお話だと助かります」
「そう? それじゃあ。あれは私がまだお店をやって間もない頃の話...」
※ ※ ※
【大先輩ママ・のりさん(73)の話】
若かった当時私は、この街の古株ママたちにすごくかわいがってもらっていてね。
今よりも横のつながりがすごく大事な場所だったから、とても助かっていたの。
ある休業日、街一番の古株、みやこママと紅葉狩りに行くことになったのよ。
みやこママは、大酒飲みのヘビースモーカー。
口が悪くて喧嘩っ早くて、けれど面倒見と気風が良い、いかにも昭和の飲み屋のママって感じの人でね。
振り回されることもしばしばだったけど、大好きなママだったわ。
その日は東京の端の方にある山林に行ったんだけど、ちょっと時期が遅くてね...。
色あせや落葉したものばかりで、二人でちょっとガッカリしていたの。
「はぁ~、疲れた。アタシ一服したいわ。どこかに休憩所の一つくらいないの?」
「一応、観光地だし、あってもおかしくないんですけどねえ」
なんて話をしながら、あてもなくフラフラしていたら、ふと、ひらけた場所に辿り着いてね。
砂利が敷き詰められた地面の少し先に数十段の階段、そこを登りきったところに鳥居が建てられている小さな神社があった。
「神社?」
立て看板に書いてある説明によると蛇を祀っている、歴史のある神社ということだったの。
「ちょっと、のりちゃん! 見て!」
いつの間にか煙草を吸いながら階段を見上げているみやこママ。
神社へ続く階段の先に見事な紅葉が見えたの。
「みやこさん! こんなところでタバコなんて吸ったらいけませんよ!」
「構いやしないわよ。この辺り砂利敷きなんだから」
みやこママは砂利敷きの地面に煙草を押し当て火を消すと、サッサと階段を登って行っちゃったの。
まったくもう...みやこママったら。
その頃はまだ喫煙に寛容な世の中だったけれど、山の中だったし、吸殻をそのままにしておくのもバチが当たると思って、仕方なく私が拾ったわ...。
「まあ、なんて綺麗!」
階段の中腹辺りから深紅に染まった紅葉が本当に見事でね。
記念写真を撮って、お参りをして、充分紅葉狩りを楽しんで帰って来たの。
帰り際、地面に落ちていた落葉も記念に持って帰って来たわ。
栞にするのにちょうどいいんじゃないかなと思ってね。
数日後、現像した写真を持ってみやこママの所へ行こうと思ったんだけど。
「えっ、何かしらこれ...」
一枚の写真を見てゾッとしたわ。
私たちの後方、階段を登りきる手前辺りの中央から、真っ白な蛇がうねっているような、白い影がはっきりと写っていて。
鎌首にあたる部分は、まるで私とみやこママを飲み込まんとするように見下ろしていたの...。
【今宵もリアルホラーで乾杯シリーズ】
・この絵、何かがおかしい...絵の中にいるはずの女の子が/「呪われた絵」
・怖い、引きずり込まれる! 夢で見た「黒い影」の正体は/「悪夢の道」
・誰もいないはずなのに...! 背後から奇妙な「音」が/「祓っちゃだめ!」
・え「命に危険」がある遊び、続けます?/「こっく●さん」
・体育館にうずくまる「何か」。みんなは見えて...ない?/「夜の体育館」
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。