ディープな街にある「スナック えむ」店主、霊感ゼロのアラフォー作家、えむ。「お礼に一杯奢るから」を謳い文句に、ホラートークをしてくれるお客さまを待つ。今宵は、店主えむの高校の同級生、洋子(40代)の話「悪夢の道」をお届けします。
※実際に身の周りで起きた実体験エピソードに基づき構成しています。
【前回の話】【閲覧注意】え「命に危険」がある遊び、続けます?/今宵もリアルホラーで乾杯「こっく●さん」(5)
「っていうか何年ぶり?」
「同窓会ぶりだから...15年ぶりとか?」
今宵、来店してきたのは私の高校時代の同級生、洋子。
「物書きをやりながら飲み屋をやってるとは聞いてたけど。あんた、飲み屋の方が向いてるんじゃない?」
「まあ、そうかもね。この職業をしてるから、物書きとしてネタ切れせずやっていけてるのもあるし」
「だから私も、あんたのネタになるような話を提供しに来てあげたのよ」
「それはうれしいわね。さっそく聞かせてくれる?」
「オッケー。私、高校時代、よく見る夢の話をしたこと覚えてる?」
「夢? ああ、そういえば...」
※ ※ ※
【高校の同級生、洋子(40代)の話】
小学生くらいの時から定期的に見る夢なんだけどね。
見知らぬ一本道を歩いているの。
暗くも明るくもない、昼夜もわからないのっぺりとした色合いの何もない道。
音もしなくて、人の気配もない、そして横道も全くないの。
その道を何の目的で歩いているのかはわからないんだけど、私はとにかくひたすら歩き続けているのね。
そのうちふと気づくと、少し先に「黒い人影」を見つけるの。
その人影は、そこにジッと立っていて確実にこっちを見ているんだけど、とにかく真っ黒で表情どころか男か女かもわからない。
途端に私、踵を返して走り出すんだけど、少しして立ち止まり振り返って見ると、その人影との距離が全く変わってないのよ。
相変わらずジッと立ってこっちを見てる。
私はどんどん怖くなって走るんだけど、今度は前に進んでる気がしなくて。
必死に動かしている両足もとても重くて、全然うまく走れない。
そして振り返ると、やっぱり同じ距離でジッと立っている黒い影。
(とにかく影との距離を遠ざけないと!)
って焦れば焦るほどどんどん足は重くなって、身体がうまく動かなくなっていく...。
そして恐怖が最高潮になったところで、いつもハッと目を覚ますの。
そんな夢を見続けていたんだけど、そのうち慣れてきちゃって。
最近は「あー。また見たのかー」ってくらいになってたんだけど。
半年くらい前に、出張で地方に行ったのよ
接待の後、歓楽街を飲み歩いてたんだけど、気づいたら深夜になっちゃって。
ホテルは歓楽街の近くにあるから歩いて帰っていたの。
その日は歩くにはちょうどいい気候で、歓楽街の雑踏も何だか心地よくて。
(酔い覚ましにちょうどいいわね)
なんて思って、鼻歌を歌いながら帰っていたんだけど。
そろそろホテルに着くかなって頃、気づいたのよ。
「あれ...こんな道だったっけ?」
雑踏どころか何の音もしない。
深夜にしては明るいんだけど、かといって日が昇ったという感じでもない。
横道もない、真っすぐな一本道。
「これって...」
すぐに、あの「悪夢の道」だって気づいたわ。
「あれ、酔いすぎたかな...」
私は自分の頬を両手で2、3度軽く叩いてみたけど、景色は何も変わらない。
一本道の真ん中に佇む私。
そして、さらに気づいたの。
少し先に、あの真っ黒い人影が立っていたのよ...。
【今宵もリアルホラーで乾杯シリーズ】
・この絵、何かがおかしい...絵の中にいるはずの女の子が/「呪われた絵」
・ガチャ...夜中に訪れた「大柄な男」をよく見ると足が/「毎週来る霊」
・誰もいないはずなのに...! 背後から奇妙な「音」が/「祓っちゃだめ!」
・え「命に危険」がある遊び、続けます?/「こっく●さん」
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