ディープな街にある「スナック えむ」店主、霊感ゼロのアラフォー作家、えむ。「お礼に一杯奢るから」を謳い文句に、ホラートークをしてくれるお客さまを待つ。今宵は、社会人1年目のイケメン男子、裕樹君(22)の話「毎週来る霊」。 ※実際に身の周りで起きた実体験エピソードに基づき構成しています。
【前回の話】怖い、引きずり込まれる! 夢で見た「黒い影」の正体は/今宵もリアルホラーで乾杯「悪夢の道」(7)
今宵、私の目の前には、すこぶるイケメンがいる。
「あの...僕、めちゃくちゃ見られてません?」
「うん。だってイケメンなんだもの」
「いや、あの、褒めてくれるのはうれしいんですけど...。見られたままだと話しづらいっていうか...」
社会人1年目だという裕樹君は、なんとかっていう韓流スターのようなシュッとしたイケメン顔。
正直、めちゃくちゃ目の保養。
最近始まった老眼が治りそうな勢い。
「気にせず話して。大丈夫、ちゃんと聞いてるから」
「はあ...じゃあお話ししますね。つい先月引き払ったばかりのマンションの話なんですが...」
※ ※ ※
【韓流スター風の社会人、裕樹君(22)の話】
就職で都内に勤務することになったので、とりあえず会社に近い部屋を探していたんです。
でも僕の勤務先の周りはどこも家賃が高くて、新社会人の僕にはとてもじゃないけど支払えない物件ばかりでした。
半分あきらめていた時、希望していたエリアよりはほんの少し離れた所に、良い物件を見つけたんです。
その物件は駅チカで、最上階の2K、風呂トイレ別。
築年数は少し古かったんですが、付近の相場と比べるとだいぶ安い。
ワンルーム、ユニットバスで考えていた僕としては夢のような間取りです。
けど、あまりに安いので「事故物件なんじゃないかな...」と思い、不動産屋に聞いてみましたがそんなことはないと言われて。
ネットでも調べてみましたが、その部屋で何か起きたという情報は見つかりませんでした。
内見に行った時も特に嫌な感じはしなかったし、立ち会ってくれた大家さんも優しそうなおばあさんだったので、僕はそこに住むことに決めたんです。
実際に住んでみるとすごく快適で、地方から出て来た僕を大家のおばあさんが気にかけてくれて、「ちゃんと食べなきゃダメよ」と食材をお裾分けしてくれたり。
田舎育ちの僕にとっては快適な環境で、引っ越して良かったなと思いました。
そんなある日、定時で帰宅をして、家でのんびり晩酌をしていました。
「お酒が足りないな...」と近くのコンビニに買い足しに行き、居間でテレビを見ながら缶ビールを開けた時です。
ガチャッ...。
突然、玄関が開く音がしました。
「あっ...!」
田舎育ちの僕は、家の玄関に鍵をかける習慣がなかったんです。
「この悪い癖、治さなきゃ...」と思いながらも、なかなか治らなくて。
するとすぐ、玄関が閉まる音がしました。
明らかに誰かが入って来た気配がします。
(もしかして...強盗!?)
都会で夜間、鍵を開けっぱなしでいるなんて強盗に入ってくださいと言っているようなものです。
(どうしよう...!)
キッチンと居間を仕切る扉があるので姿は見えないのですが、その「何者か」は、明らかにこちらに向かって来ています。
僕はあまりの恐怖で、固唾を飲んで扉を凝視することしかできませんでした。
カチャ...
扉がゆっくりと開きました。
するとそこには、見たことのない大柄な男が立っていました。
「だ、誰ですかっ? あっ...!?」
そして、気づいてしまったんです。
その男...足がないんですよ。
【今宵もリアルホラーで乾杯シリーズ】
・この絵、何かがおかしい...絵の中にいるはずの女の子が/「呪われた絵」
・怖い、引きずり込まれる! 夢で見た「黒い影」の正体は/「悪夢の道」
・誰もいないはずなのに...! 背後から奇妙な「音」が/「祓っちゃだめ!」
・え「命に危険」がある遊び、続けます?/「こっく●さん」
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