とあるディープな街にある「スナック えむ」店主、霊感ゼロのアラフォー作家、えむ。「お礼に一杯おごるから」を謳い文句に、ホラートークをしてくれるお客を待つ。今宵は、数件隣の店の若手ママ、恵子ちゃん(32)の話「祓っちゃだめ!」。
※実際に身の周りで起きた実体験エピソードに基づき構成しています。
【前回】この絵、何かがおかしい...絵の中にいるはずの女の子が/今宵もリアルホラーで乾杯「呪われた絵」(1)
「もう一杯くださ~い」
「恵子ちゃんさぁ、いい加減自分の店に戻りなさいよ」
さっきから私の目の前で飲んだくれているのは、数件隣にあるバーの若手ママ、恵子ちゃん。
恵子ちゃんはカウンターで頬づえをつきながら、次々とグラスを空にしていきます。
「うちの店、どうせ誰も来やしないからいいんです」
「『誰も来ない』って...なんでそこまで言い切れるの? ま、うちも今日は、恵子ちゃんでそろそろ終わりそうだけど...」
「あ! っていうか私、えむさんにホラートークをしに来たんだった! えむさん、聞いてくださいよぉ...」」
恵子ちゃん...いかにも霊感なさそうだし「ま、面白い話だったら作品のネタとして使ってやるか」くらいにしか思っていなかったのですが...。
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【近所のバーの若手ママ・恵子ちゃん(32)の話】
うちの店、一時期はものすごい繁盛してたんです。
毎日店内がお客さんであふれて、店の外に行列ができるくらい。
お客さんの中には、北海道や沖縄からわざわざ来てくれた人もいて、大学生くらいから、お年寄りまで客層もすごく広かったの。
でも、テレビや雑誌で取り上げられたり、ネットで紹介されたりしたわけでもない...。
SNSに詳しい若いバイトの子に聞いてみても、うちの店がバズってるなんてことは全然なくって。
何か特別なメニューを出したり、お酒のラインナップを変えたりしたわけでもないし...。
とにかく、うちの店が急に人気になった理由が全然わかりませんでした。
私なんとなく「いつの間にか人気が出たのかなあ~?」なんて、呑気に思っていたんですけど...。
その頃、あることに気づいたんです。
店内になぜか一カ所だけ、すごく寒いところがある。
すきま風があるわけでもないのに、「そこ」にいるとなぜか震え上がるほど寒いんです。
霊感的なものがあまりない私でも「この寒さはおかしいな」と思うくらい。
「もしかしたら、見えない『何か』がある場所なのかもしれない」くらいには思っていました。
けど何より店が忙しかったし、正直なところ、気にしている余裕がありませんでした。
でも、ある日ついに「異変」が起きたんです。
その日は、店内で事務作業をしていたんですが、そろそろ開店しようかなと片づけを始めた時のこと...
カタ...カタカタ...カタカタ......
(なにか硬いものが動いている? というより、これは...)
壊れたおもちゃが、まるで笑っているような奇妙な「音」が、例の場所の方から聞こえてきたんです...。
【今宵もリアルホラーで乾杯シリーズ】
・この絵、何かがおかしい...絵の中にいるはずの女の子が/「呪われた絵」
・ガチャ...夜中に訪れた「大柄な男」をよく見ると足が/「毎週来る霊」
・怖い、引きずり込まれる! 夢で見た「黒い影」の正体は/「悪夢の道」
・え「命に危険」がある遊び、続けます?/「こっく●さん」
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