体育館にうずくまる「何か」。みんなは見えて...ない?/今宵もリアルホラーで乾杯「夜の体育館」

ディープな街にある「スナック えむ」店主、霊感ゼロのアラフォー作家、えむ。「お礼に一杯奢るから」を謡い文句に、ホラートークをしてくれるお客さまを待ちます。今宵は、若手女優の優ちゃん(23)の話、「夜の体育館で見たものは」。『今宵もリアルホラーで乾杯』第11回です。

※実際に身の周りで起きた実体験エピソードに基づき構成しています。

【前回の体験談】ガチャ...夜中に訪れた「大柄な男」をよく見ると/今宵もリアルホラーで乾杯「毎週来る霊」(9)

体育館にうずくまる「何か」。みんなは見えて...ない?/今宵もリアルホラーで乾杯「夜の体育館」 1.jpg

「えむさんが、怖い話を集めてると聞いたので来ました」

久々に会ったのは若手女優の優ちゃん。

以前、私が脚本を担当したドラマに出演してくれたのがきっかけで何度か交流したことはあったけど、お店に来てくれたのは初めて。

「優ちゃんがそういう体験をしたことがあるなんて意外ね。どちらかっていうと興味がないタイプかと思ってたわ」

「興味がないっていうか、ないフリをしてるんですよ。実は私、ものすごい霊感体質なんです」

「えっ、そうなの?」

「はい。見えないフリをしてないと、いろんなものがどんどん寄ってきちゃうので、『全く興味がないように見せている』っていうか」

「そうだったんだ...」

そんな優ちゃんが今回話してくれたのは、中学2年生の時に体験した話。

※  ※  ※

【若手女優・優ちゃん(23)の話】

昔から「人の集まるところには霊が集まる」って言いますよね?

学校も霊が集まりやすいところだそうなんですが、私が通っていた中学校もそうでした。

私が育った辺りは大昔、権力争いが頻繁に起きていて、戦に敗れた武者たちが大勢息絶えたことで有名な地域です。

中学校があった場所は元々沼地だったらしく、亡骸は皆、そこに放り込まれたという言い伝えがあったんです。

そのせいか、よく見ると噂されていたのが「落武者」。

甲冑を着たざんばら頭の男が立っている、生首がユラユラと飛んでいる、苦しそうな唸り声が聞こえる...など、噂は後を絶ちませんでした。

私は、入学した頃からその気配を感じていましたが、気づくと寄ってくるという経験を以前にしていたので、「何も見えない、感じない」フリを徹底して、毎日を過ごしていたのです。

中学2年生のころ、私は演劇部に所属していました。

その日は、翌日に都大会を控えた最後の稽古。

顧問の先生に許可を取り、特別に夜遅くまで体育館の舞台を使って稽古していいことになりました。

でも私、実は学校の中でも体育館が一番苦手で。

昼間でもものすごい数の気配を感じていたので、夜の体育館に入るなんて正直かなり抵抗があったんですけど、稽古に出ないわけにもいかないですよね...。

私たち2年生と1年生は舞台袖や客席などで、メインキャストの3年生の先輩たちをサポートする役目を担っていました。

最後のリハーサル中のことです。

私はその時、客席横に立って舞台を見ていたんですが、とにかく寒気が止まらないんです。

ちょうど稽古を始めたくらいから風が強くなり始め、校庭にあるフェンスをガシャンガシャンと揺らしていましたが、時期は9月半ば。

まだまだ蒸し暑い季節なのに、真冬みたいに寒い。

同時に耳鳴りもひどくて、

(やばい...洒落にならないくらい「いる」)

って思いました。

私の隣にいた同級生も

「なんかキーンって、変な音がしない?」

としきりに音を気にしていたので、たぶん私と同じような現象が起きていたんだと思います。

もしこの現象を認めてしまったら、たぶん一気に「来る」気がしたので、私は同級生に話しかけず、ひたすら耐えながら舞台に集中しました。

そんな中、舞台はクライマックス。

主役のB先輩が舞台袖から登場し、それを煽るように音響担当のMちゃんが音楽をかける...はずでした。

(あれ? 何もかからない...?)

聞こえるのは風のうねるような音だけ...。

少しの沈黙の後、「止めまーす!」と進行役の声が。

「ちょっとM! 音出しのきっかけ、忘れたの?」

音響担当の1年生Mちゃんに、舞台上からB先輩が大声で注意しました。

するとMちゃんがスタッフブースからキョトンとした表情で顔を出し、「でも、B先輩が舞台に出てきたら音出しですよね? って、あれ?」

誰が見ても舞台の中央に立っているB先輩に対し、トンチンカンなことを言うMちゃん。

(Mちゃん、ちゃんと先輩のこと見えてるのかな...?)

と、私はちょっと不安な気持ちに。

音響ブースは舞台袖の上にあります。

そこから反対側の舞台袖に待機しているBさんが舞台に出たのを確認したら、音楽を出すようにMちゃんは指示されていました。

(おかしい...あの方向であの角度からなら、MちゃんにもB先輩のことが見えているはず。)

「Bさん、舞台袖にずっとうずくまってませんでしたか? もうすぐ出番なのに大丈夫なのかなって思いながら、出るタイミングを見計らってたんですけど、あ、でも...」

そう言って、Mちゃんは息を飲むと黙ってしまいました。

「何、どうしたの?」とB先輩。

「その人、髪がすごく長かったんです。B先輩、ショートヘアですよね...」

【今宵もリアルホラーで乾杯シリーズ】
この絵、何かがおかしい...絵の中にいるはずの女の子が/「呪われた絵」
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健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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著者:えむ
スナックを経営。独自にリサーチした都内のオススメ酒場は多数。夢はおんな酒場放浪記に出演すること。

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