20代で結婚、2男1女を授かり、主婦として暮らしてきた中道あんさん。でも50代になると、夫との別居、女性としての身体の変化、母の介護...と、立て続けに「人生の転機」が訪れます。そんな激動の中で見つけた「50代からの人生を前向きに過ごすためのヒント」。今回のエピソードは、「地区の墓地が整理されること、聞いてますか?」と実家のご近所のおばちゃんから連絡があり...。
前回の記事:現在57歳、「最後までこのテーブルと過ごしたい」。一目惚れしたダイニングセット
日曜日の午後10時、そろそろお風呂に入ろうかなと、パソコンのキーボードを打つ手を止めようとしたら、スマホのLINEが光りました。
実家のご近所のおばちゃんからで
「地区の墓地が整理されること、聞いてますか?電話をください。」
とありました。
実家を処分してから4年。
地元にはほとんど帰ることもなく、年に数回のお墓参りにだけ。
檀家や氏子も抜けて、隣組のお付き合いなどもしていません。
遅い時間でしたが、わざわざ知らせてくれるにはきっと大事な用件だと思って電話をしました。
電話口には元気そうなおばちゃんの声が響きます。
母は今年で84歳。
おばちゃんは母より5、6つは若かったので、多分アラウンド80です。
話というのは、地区の墓地が整備されることになり、無縁仏や墓守ができないお墓を整理して区画を整えようという案件が地元名士の肝入りで持ち上がっているんだそう。
なのでお墓の守っていくのならば地区に申請しなければならないというのです。
「あんさんは、実家の墓はどうするの?
お母ちゃんらで終わりならば、これをきっかけに墓じまいするのもアリだよ」
実家の墓をどうするのかは、50代以降の子供が抱えるミッションの一つです。
話を聞きながら、ついに決断の時がやってきたのだと思いました。
ひと通りの話を聞いて「ところで、おばちゃんは元気ですか?」とご機嫌を伺ってみると
「ええ、おかげさんでな。楽しく暮らしてるねん。
おっちゃんもな、3年前に亡くして。
おばちゃん、身体が不自由なおっちゃんとずっと一緒やったやろ。
最後は施設に入ってもらったけど、おばちゃんの時間なんてあれへんかった。
それが今な、〇〇ちゃんのお母ちゃんらと、お茶したりご飯食べに誘ってもらたりして、
遊びに行ったりしてるねん」
「そう、それはとってもええことやね。おばちゃん、大変やったもんなぁ」
「そうやねん、まだ元気やからな。動けるうちは、好きなようにさせてもろおうと思ってんねん」
「結構なことやな~。有難いことやね~」と返事をしつつ、なんて謙虚なんだろうと思いました。
「おかげさんで」「させてもらう」っていったい誰に対しての許可なんだろうと。
言葉にできないことは頭にないし、頭にないことはスラスラと言葉には出てこないと思ういます。
おばちゃんは70代でやっと手に入れた自由なおひとり様生活を「当たりまえ」だとは思わずに、心から感謝しているんだなぁと感じました。
歳の重ねかたは人それぞれです。
「あんさん、お母ちゃん元気か?」と聞かれました。
「おばちゃん、お母ちゃんはあのまま家におったら、とうに亡くなってるで。
施設に入る時は大暴れしてたけど、今はここが一番ええって。
100歳まで生きそうなくらい元気やわ」
「そうか、よかったな~。お母ちゃんはお父ちゃん亡くして寂しかってんで」
誰の人生にも困難はあります。
それを乗り越える強さを持った人は、感謝と謙虚さを持ち合わせているのではないかと思います。
「おばちゃん、お彼岸にでも寄らせていただきます」
「でもおばちゃん、ようでかけて家おらんこと多いから、電話ちょうだい」
人生の後半がピークって最高だなと思いました。
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