上皇后美智子さまの長年のご親友であり、彫刻家・舟越桂さんの姉でもある末盛千枝子さん。絵本編集者を経て「すえもりブックス」を設立した末盛さんは、84歳を迎えた現在、東京から移住した岩手山を望む自宅でひとり暮らしを送られています。著書『今だからわかること 84歳になって』(KADOKAWA)は、80代という人生の深まりを迎えた末盛さんだからこそ感じられる、日々の発見や生き方の実感が綴られた一冊です。年齢とともに訪れる身体の変化や暮らしの機微をまっすぐに見つめつつ、ユーモアを交えて語られる言葉の数々は、これからの人生を軽やかに生きるためのヒントにあふれています。
※本記事は末盛千枝子(著)による書籍『今だからわかること 84歳になって』から一部抜粋・編集しました。
私のおしゃれ
出かける時には、長男の武彦の部屋に行って、「この服でいい?」と聞いていました。そうすると、「いいんじゃないか」と返してくれることもあれば、「う~ん」と言うこともありました。私たちは好みが似ていて、外出しようと着替えたら二人とも大好きなブルーの服で、「かぶっちゃった、じゃあ、私が着替えるね」ということもありました。
私らしいおしゃれといえば、ボーダー柄と香水でしょうか。ボーダー柄は大好きです。前述したように、盛岡のNHK文化センターで、月に1度の講座を14年間続けたのですが、ある時、受付の女性が噂しているのが聞こえてきました。「末盛さん、今日もボーダーね」って。まあ、私ってそんなにボーダー柄ばかり着ているかしら?と、おかしくなりました。
香水は、三宅一生の「ロードゥ イッセイ」つまり、一生の水。パリに住む妹が母の土産にと買ってきたのですが、母の好みではなく、貸してもらってつけたところ、私が好きな香りだったのです。以来、40年。目立たず気持ちがよくて、本当にロー=水みたい。これをつけていると、あっ、末盛さんが来たってわかるようです。そうやって覚えてもらってるのだから、もう他の香水は使えません。
アクセサリーで忘れ難いのは、ニューヨークのドイツ人の男性編集者からもらったペンダントです。仕事上のやり取りで散々怒鳴られて、挙句に遅れて出来上がった本を「捨ててしまえ!」とまで言われた局面をなんとか乗り越えたことがありました。その後、末盛と結婚することになった時、そのことをその編集者に伝えたら、ペンダントを送ってきてくれたのです。マフィアの親分みたいな人なのに、そんな心があったのかと嬉しかった。気に入って、今もよく使っています。

