場末のスナックの稼ぎ方。優れた「運営コスト」とお客さんの「ニーズ」

1対nだから人件費が安い

業態の点から見てもコストの強みがあります。居酒屋と比較すると、居酒屋は料理メニューが豊富で、その分だけコストがかかります。

一方のスナックは、スナック(軽食)を提供するスナックバーが語源で、料理のメニューが限定的であるためコストが低くなります。

キャバクラは高コストです。キャバクラは女性スタッフがお客さんの隣に座って1対1に近い形で接客をするため、きれいな女性を何人も雇う必要があります。また、店内をきらびやかに装飾する必要もあり、これらがコストを押し上げます。

一方のスナックはママやチーママがカウンター越しに会話する1対n(複数)形態の店が多く、人件費が低くなります。運営コストが低ければ価格設定も低くできます。

また、こぢんまりとした店は落ち着いて飲めますし、ママなどとの距離も近くなります。お客さん側から見ると、スナックは、安く、落ち着いて飲めることが長所で、それが他の飲食店との差別化要因になっています。

細かな話ですが、キャバクラやクラブなどのような接待を行う店は風俗営業、接待を行わずにカウンター越しに話すだけの店は深夜酒類提供飲食店営業となり、それぞれ必要な許可が異なります。

スナックの場合も、お客さんと一緒のテーブルについたり、デュエットしたりする場合は風俗営業の扱いになります。

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ストレスフリーの場が必要

お客さん側のニーズをもう少し深く掘り下げると、スナックはお客さんたちのサードプレイス(third place)になっているといえます。

サードプレイスは、居心地が良く、ストレス、重圧、責任感などから解放される「第3の場所」を意味する言葉です。

第1の場所であるファーストプレイスは家です。第2の場所であるセカンドプレイスは職場や学校です。多くの人は日常的にこの2箇所を行き来していますが、それだけでは息が詰まります。

サードプレイスという概念を提唱したレイ・オルデンバーグというアメリカの社会学者によれば、現代社会においては「サードプレイス」を持つことが人生の満足度を高めることにつながります。

会社帰りにふらっと寄ることができ、財布に負担をかけずに息抜きできるスナックは、まさにサードプレイスの条件を満たしている店といえるでしょう。

サードプレイスのポイントは「ゆるくて良い」ことです。自宅や職場はきれいにしておきたいですが、サードプレイスは雑多で構いません。緊張感から解放されるという点では、むしろ雑多であることが大事です。多少、汚くても問題なく、狭くても構いません。美人揃いで料金が高いキャバクラは緊張感が生まれますが、スナックはリラックスして飲むことができます。

その点でもスナックはサードプレイスにピッタリで、そのゆるい雰囲気がリピーターを引きつける重要なポイントになっています。

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菅原由一
1975年三重県生まれ。SMG税理士事務所・代表税理士。人よりも3倍の勉強量で税理士試験に打ち込み、20代で税理士資格を取得。現在は、東京・名古屋・大阪・三重に拠点を置き、中小企業の財務コンサルタントとして活躍。銀行が絶賛する独自資料の作成で赤字会社も含め融資実行率は95%以上。顧問先の黒字企業割合は 85%を実現し、全国平均30%を圧倒的に凌ぐ。これまでに全国各地で 1,000 本以上の講演やセミナー講師を務め、1万名超の経営者が受講し、大手企業からの講演依頼が絶えない。YouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』は開設わずか1年で登録者数38万人を突破し、TV、専門誌、新聞、各メディアで取り上げられ注目を集めている。「努力と結果は比例する!」を座右の銘として、YouTube、ブログ、SNSで経営のノウハウを毎日配信している。

※本記事は菅原由一 著の書籍『タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

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