「今日のごはん、作りたくない...」と思ったことありませんか?料理レシピ本大賞2019「エッセイ賞」受賞で話題の書籍『料理が苦痛だ』(自由国民社)から、著者・本多理恵子さんが気づいた「苦痛の正体」を連載形式でお届けします。今夜のごはんを作る前に、まずは料理の「呪縛」を探ってみませんか?
「誰からも評価されていない」という呪縛
私たちは小さな時から頑張ってきた。勉強に習い事、部活に人間関係......だいたいのことは「頑張れば何かしらの評価がなされた」。
ところが今、毎日必死に作り続けている料理に対しては、ちゃんと評価がなされているのだろうか?ふと疑問に思う。
評価される社会で学び、働き、そして主婦・主夫になった。家庭の仕事という新しい分野に取り組む。掃除洗濯家事育児。しかし、ほとんどのものがその都度「評価」されない。それでも「自分はちゃんとやっている」という自己満足や、家族の健康や笑顔が喜びだ。しかしそれは正当な評価といえるだろうか?
誰かに認めてほしい、共感してほしい、応援してほしい。SNSの普及で私たちはその内なる思いを見たこともない相手に求めるようになった。私が作った料理を目の前の家族ではなく、見たこともない人に褒められるという矛盾。本当はまず初めに食べた家族からの「美味しいね」とか「コレまた作って」の反応、評価が欲しいのではないだろうか?
確かに見たこともない相手から褒められるのも嬉しいものだ。自分が社会とつながっている、心のよりどころになるという側面も否めない。第一、やったことに対しては誰からでも、単純に褒められたいと思うものだ。だからそれはそれで結構なことだ。
でも実際料理を食べるのは目の前にいる家族だ。たまには向き合って、ご飯について話してみたらどうだろうか?評価を聞き出さなくてもいい。まず作った自分の思いを話してみよう。感想を聞いてみよう。意外と相手に響くものだ。
また、相互に理解しあうということも大事だと思う。例えば良く聞く「カレーとかの簡単なものでいいよ」発言。コレを言われた女性はだいたい同じことを思う。「そのカレーがめんどくさいんだよ!」と。
切って、炒めて、煮て。結構な手間のフルコースだ。この「カレーで良いよ」発言に対する主婦の食いつきっぷりったら、ちょっと驚いた。カレーを簡単料理だと思わないでほしい、カレーならすぐ出来て面倒じゃないって思わないでほしい。カレーは手抜き料理じゃない。などなど......
たしかにいったん作ってしまえば何日か食べ続けられるが、一から作るとなるとちょっとした気合が必要だ。
ちなみに簡単なものとは、「白米に塩をかけて食べる」。これくらいのレベルを指すということを「カレー発言」をしがちな方は心に刻んでおいてほしい。そしてまた、作ったものをそう簡単に食べて欲しくない、という思いもある。
下ゆでして、あく取りしてそこから煮込むこと3時間。それが「テレビを見ながら5分で食べる、しかも無言」。この無常よ......。全部想像して全部フォローしてくれとは言わないが、手間をかけて作ったのならば、そのストーリーも少しは共有しても良いと思う。
リアルな社会に生きている私たち。食べるということはリアルなことだ。目の前でリアルに食べている相手がもし無反応なら、逆にあなたから歩み寄ってみたらどうだろうか?ただし、はじめは面倒くさくならない程度に。答えが返ってきやすいように。
「さて、このソースは何から出来ているでしょうか?」
家族の食事を用意する全ての人が共感!「料理が苦痛だ」記事リストはこちら!
著者自身の背景から始まり、3ステップで実現できる苦痛を減らす方法や、「蒸す」「焼く」「煮る」だけで完成する11の苦痛軽減レシピが、5章にわたってまとめられています